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ナガセヴィータのWebマガジン

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2023.04.28

みんながおいしい、みんなでおいしい。米の里から届けるアレルゲンフリースイーツ

田んぼの広がる御津五城地区で、米粉を使ったアレルゲンフリースイーツを作り、地域の方々のよりどころとなるカフェ「omoや545(おもや545)」を運営する中里さん夫婦。東京から岡山市郊外に移住し、過疎化の進みつつある地域に飛び込んで自ら人の集う場を作り出しています。人の縁をつなぎ、なんでも「みんなで一緒に楽しむ」ことを大切にしてきた、ご夫婦の活動を紹介します。

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東京の生活から一転、自然豊かな山里へ

のどかな山々に囲まれた岡山県岡山市の郊外、一面の田んぼを見渡すように建つ「omoや545」。築150年の古い庄屋屋敷を改装した建物に、アレルゲンフリースイーツの工房とカフェ、宿泊施設を備えた店舗です。

周辺に広がる御津五城地区の風景と「omoや545」の店舗外観▲周辺に広がる御津五城地区の風景と「omoや545」の店舗外観

ここを営む中里真一さん・仲田早苗さんのご夫婦は、2018年に東京からこの地に移住してきました。
もともと東京の都心で、真一さんはITエンジニアとして、早苗さんは料理研究家・薬膳師として、それぞれ自身の仕事にまい進し充実した生活を送っていました。ですが、特に真一さんの中には早いうちから移住の願望があり、10年近く全国の候補地を見て回っていたそうです。その中で、家も土地の雰囲気もひと目で気に入ったというのが、この岡山・御津五城地区の古民家でした。

2017年に物件を購入し、当時1歳の娘さんとともに引っ越してきたのは翌年の春。ご夫婦にとって縁もゆかりもない土地でしたが、なんと住み始めるまでにはすっかり、地域の方たちと顔なじみになっていたのだといいます。

「集落に誰か移住してくるとなったら、注目は絶対にされますよね。だったら先にこちらから『私たちこういう者ですよ』ってじゃんじゃんオープンにしていこうと思ったんです。引っ越し準備のために五城に来るたびに、周りの家に1軒1軒あいさつして回って、地域のいろんなことを教えてもらいました」と、早苗さんはにこやかに話します。
中里さんご夫婦(左)真一さん(右)早苗さん
▲中里さんご夫婦(左)真一さん(右)早苗さん
地域の方々と交流するうちに、ご夫婦の中に「古民家を使って、地域の課題を解決し、ふれあいの拠点になるような場所を作りたい」、また早苗さんの仕事である「食」の分野で「地域の特産となるものを作りたい」との想いがふくらんでいきました。そして、2019年にこれらの構想をまとめた「えんつむプロジェクト(五城縁を紡ぐ家再生事業)」をスタートさせました。
中里さんご夫婦(左)真一さん(右)早苗さん
▲中里さんご夫婦(左)真一さん(右)早苗さん

みんなで同じものを、みんなでおいしく食べられるように

「omoや545」の中核にあるのは、卵・乳・小麦をはじめとする7大アレルゲンとナッツ類を使わない、アレルゲンフリースイーツの工房です。地域の特色をいかしたものづくりを模索する中で、なぜこの品に行き着いたのでしょうか。そのいきさつを伺いました。

「五城地区は昔から米作りが盛んな土地で、『五城米』の名で知られているんです。地域の方にリサーチしても、この地でなにか作るなら『そりゃやっぱりお米を使ったものじゃろう』って」。そこで早苗さんがアイデアを練っていたところ、見学に行った県内の米粉工場から相談をもちかけられたことが、商品開発の大きなきっかけになったそうです。

相談の内容とは、「ある幼稚園で、アレルゲンフリーのおやつを作ってもらえる業者が見つからず困っている」というもの。早速2人で幼稚園を訪ね先生方にお話を聞きました。

「『お誕生会など、せめて特別な行事のときだけでも、園児みんなで同じものを食べられないでしょうか』と園長先生は切実におっしゃっていました。みんなでケーキを食べましょうというときに、アレルギーの子だけ別のテーブルで違うものを食べるというのはやっぱり寂しいし、命に関わることだけに、対応する先生方の責任の重さにも心が痛み、私たちになにかできることはないだろうかと強く思いました」。

アレルゲンフリーの食品を安全に作るには、設備を小麦や卵を扱うものとわけることが推奨されるため、既存の製菓工場は、それがネックとなって引き受けられないでいたといいます。「これから新規に工房を作る私たちだったら挑戦できる。今まで私たちが考えてきたことが、すべてここに結びついてきたと感じました」と、2人は話します。

保育施設に届けられるオリジナルスイーツの一例▲保育施設に届けられるオリジナルスイーツの一例

「とはいったものの、果たして本当にできるのか?というところからのスタートでしたね」と笑う早苗さん。
何度も試作を重ね、園の先生たちや娘さん、真一さんに何種類もの生地を食べ比べてもらったそうです。

今では園からレシピはすべて早苗さんに一任され、数カ所の保育施設にオリジナルのスイーツを納めています。四季折々のかわいらしいデコレーションが施された、見た目にも楽しくおいしいケーキを、子どもたちも先生も安心して一緒に食べられるようになりました。

素材のもつ機能で、卵やバターなしでもふんわり、しっとり

「omoや545」のアレルゲンフリースイーツ▲「omoや545」のアレルゲンフリースイーツ

実はomoやのアレルゲンフリースイーツ作りには、トレハロースをはじめとするナガセヴィータ(Nagase Viita)の製品が一役買っています。

米粉のお菓子は、時間がたつとどうしても粉っぽさが出てしまうため、これを改善する方法を早苗さんが調べる過程で、トレハロースに出会いました。
早速試してみると、効果は思った以上のものだったそう。ほどよいしっとり感を保つとともに、米粉生地特有の重さも抑え、ふんわりした食感を保ちやすくなりました。

今はスイーツだけでなく、カフェで出す料理にもトレハロースを使っています。「お米に入れて炊けばごはんの粒立ちがよくなるし、塩麹と一緒に鶏肉に漬けて焼くと、とても柔らかくジューシーに仕上がるんですよ」と、早苗さんは顔をほころばせます。

「omoや545」のアレルゲンフリースイーツ▲「omoや545」のアレルゲンフリースイーツ

カフェでは五城米を使ったおにぎりや地元野菜を使った薬膳料理が提供される▲カフェでは五城米を使ったおにぎりや地元野菜を使った薬膳料理が提供される

また、サブレなどにはナガセヴィータの水あめ「ハローデックス®」も使用しています。てん菜糖の一部をハローデックス®に置き換えることで焼き色がよくなり、野菜パウダーの素朴な色がきれいに出るようになりました。

早苗さんは「トレハロースは添加物表示が必要な材料ではありますが、自然界にも存在する糖質であり、私たちとしては十分に安心して使えるものだと判断しています。アレルゲンフリーでおいしいことをomoやのお菓子では最優先にしています」と、考えを語ります。

カフェでは五城米を使ったおにぎりや地元野菜を使った薬膳料理が提供される▲カフェでは五城米を使ったおにぎりや地元野菜を使った薬膳料理が提供される

「おいしいね」「楽しいね」の体験を大切に

「えんつむプロジェクト」のもうひとつの柱である「地域のよりどころづくり」。猛威を振るったコロナ禍に翻弄されながらも、2020年11月に「omoや545」をオープンすることができました。もちろんメニューはすべてアレルゲンフリー。想いを共有するスタッフたちは、多くが地域のママさん仲間だそうです。


古民家の再生工事は、地域の方にも作業に参加してもらい、ワイワイ楽しみながら壁塗りやレンガ敷きなどの作業に汗を流したといいます。
また、コロナで中止になってしまった地元神社の夏祭りの代わりにここで手づくりの縁日を開いたり、1周年・2周年の記念パーティーを開いて地域の方に伝統の獅子舞を披露してもらったり。こうしたさまざまなイベントを催し、大人も子どももみんなが笑顔になる時間を作り続けています。
(左)地域の方々による獅子舞披露の様子、(右)地域の人々が集まる店舗前の庭
▲(左)地域の方々による獅子舞披露の様子、(右)地域の人々が集まる店舗前の庭
真一さんは語ります。「私自身ITの仕事に長く携わってきましたが、今はもう映画や音楽でさえも、いかに効率よく情報処理するかという感覚になっている気がして。でも、誰かと一緒に食を味わう体験だけは、どれだけ時代が進んでも変わらないリアルなものだと思うんです」。
その言葉をつなぐのは早苗さん。「みんなで一緒に、おいしいね、楽しいねって言い合う時間は、本当にすてきなもの。このひとときを、いつまでも大切にしていきたいですね」。

ご夫婦のこうした想いをこれからも応援し続けられるよう、ナガセヴィータは引き続き、安心・安全な製品をお届けしてまいります。

わたしたちが注目するサステナブル・ポイントomoや545

  • ●地元の特産品を使った食品づくりで、地域資源の活用とPRに貢献
  • ●人々が集まれる場所と機会をつくり、地域住民の交流を推進
  • ●みんなで一緒に食べる楽しさを、アレルゲンフリースイーツや食事を通じて提供