第25回トレハロースシンポジウム

「トレハロースシンポジウム」は今年で第25回を迎えます。今回のテーマは「トレハロースで導くサステナブルな未来」とし、メインシンポジウムに加え、積極的な意見交換の場としてイブニングセッションを4年ぶりに企画いたしました。 トレハロースに特化したこの研究発表会を四半世紀にわたり継続できましたのは日本のみならず世界中の研究者のみなさま、日本応用糖質科学会のご後援の賜物です。心より御礼申し上げます。 主催者である当社は創業140年を機に、2024年4月より「林原」から「Nagase Viita」に社名を変更し、新たなスタートを切ります。これからも本シンポジウムがトレハロースの新たな研究のきっかけになることを願い、ここにご案内いたします。ふるってご参加くださいますよう、なにとぞお願い申し上げます。

開催概要

日時
2023年11月2日(木) メインシンポジウム:12:55~17:25(会場受付12:30より) イブニングセッション:17:40~19:30
会場

ソラシティカンファレンスセンター   ■メインシンポジウム:ソラシティホール(2階)  ■イブニングセッション:Room C(1階)

〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台4-6 御茶ノ水ソラシティ 電話:03-6206-4855 ◆交通 JR中央線・総武線「御茶ノ水」駅 聖橋口から徒歩1分 東京メトロ千代田線「新御茶ノ水」駅 B2出口【直結】 東京メトロ丸の内線「御茶ノ水」駅 出口1から徒歩4分 都営地下鉄新宿線「小川町」駅 B3出口から徒歩6分

  • お客様用の駐車場はご用意がございません。ご来場の際は、公共交通機関をご利用ください。

  • お申し込みは先着順です。事前のお申し込みがない場合は、当日受付にて参加をお断りさせていただく場合がございます。

主催/
共催/後援
主催:株式会社 林原 後援:日本応用糖質科学会
参加対象/
定員
メインシンポジウム:300名、イブニングセッション:50名 ※イブニングセッションのみの参加はご遠慮ください。
参加費
メインシンポジウム、イブニングセッション共に無料(事前登録制) ※イブニングセッションのみの参加はご遠慮ください。
全体テーマ
トレハロースで導くサステナブルな未来
座長
第一部:鬼塚 正義(徳島大学大学院 社会産業理工学研究部生物資源産業学域 講師) 第二部:黄川田 隆洋(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 グループ長)

プログラム

トレハロースで導くサステナブルな未来

プログラム概要

メインシンポジウム

スケジュール

内容

12:55 - 13:10

開会

主催者挨拶 安場 直樹 (株式会社林原代表取締役社長)

13:10 - 14:40

第一部 座長:鬼塚 正義(徳島大学大学院 社会産業理工学研究部生物資源産業学域 講師)

Ⅰ 高濃度トレハロースは線維芽細胞をセネッセンス様状態に誘導して創傷治癒を促進する 武藤 潤 (愛媛大学大学院医学系研究科皮膚科学 講師)

Ⅱ トレハロースを含有する細胞保存液セルストアの処方設計と評価 藤田 泰毅、西村 益浩、和田 圭樹、小森 奈月、白川 智景、竹縄 太一 (株式会社大塚製薬工場 研究開発センター)

Ⅲ 多機能保湿剤“イソプレングリコール”とトレハロースの組み合わせによる毛髪補修性 荒井 孝徳 (株式会社クラレ ケミカル研究開発部 化学品研究開発グループ)

14:40 - 14:55

休憩

14:55 - 16:25

第二部 座長:黄川田 隆洋(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物機能利用研究部門グループ長)

Ⅳ [海外講演/同時通訳あり] Trehalose-based seed coatings to boost agriculture in marginal lands (耕作不適地における農業を可能とするトレハロースを配合した種子コーティング技術) Benedetto Marelli (Massachusetts Institute of Technology, Department of Civil and Environmental Engineering, Associate Professor)

Ⅴ 放線菌が生産するトレハロース系化合物の化学と生物 五十嵐 康弘 (富山県立大学生物工学研究センター 教授)

Ⅵ トレハロースの飼料用途開発 ~ サステナビリティへの貢献 ~ 向井 和久 (株式会社林原 フードシステムソリューションズ部門)

16:25 - 16:35

休憩

16:35 - 17:15

総合討論会

17:15

閉会挨拶 天野 良彦 (信州大学工学部 教授 工学部長/日本応用糖質科学会 会長)

  • プログラムの内容は都合により変更することがあります。スライドポスターの写真撮影はご遠慮ください。


イブニングセッション 17:40 -19:30 (立食形式食事付)

スケジュール

内容

18:10 - 18:40

ポスター発表コアタイム/ディスカッション     

  • メインシンポジウムの内容についてポスターを使ってディスカッションする交流会です

  • イブニングセッションのみの参加はご遠慮ください。

  • プログラムの内容は都合により変更することがあります。ポスターの写真撮影はご遠慮ください。

抄録

  1. 高濃度トレハロースは線維芽細胞をセネッセンス様状態に誘導して創傷治癒を促進する武藤 潤愛媛大学大学院医学系研究科皮膚科学

  2. トレハロースを含有する細胞保存液セルストアの処方設計と評価藤田 泰毅、西村 益浩、和田 圭樹、小森 奈月、白川 智景、竹縄 太一株式会社大塚製薬工場

  3. 多機能保湿剤“イソプレングリコール”とトレハロースの組み合わせによる毛髪補修性荒井 孝徳株式会社クラレ

  4. Trehalose-based seed coatings to boost agriculture in marginal lands (耕作不適地における農業を可能とするトレハロースを配合した種子コーティング技術)Benedetto MarelliMassachusetts Institute of Technology, Department of Civil and Environmental Engineering

  5. 放線菌が生産するトレハロース系化合物の化学と生物五十嵐 康弘富山県立大学生物工学研究センター

  6. トレハロースの飼料用途開発 ~ サステナビリティへの貢献 ~向井 和久株式会社林原 フードシステムソリューションズ部門 新領域開拓室

演者紹介

  • 愛媛大学大学院医学系研究科皮膚科学 武藤 潤

    略歴

    1999年 慶應義塾大学医学部卒業1999年 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室(西川武二教授)入局 2004年 防衛医科大学校皮膚科学教室(多島新吾教授)助教2007年 医学博士(慶應義塾大学第4178号) 2008年 University of California, San Diego 皮膚科 (Richard L. Gallo 教授) Postdoctoral fellow2013年 同 Assistant project scientist 2014年 愛知医科大学皮膚科学教室(渡邊大輔教授)講師 2018年 愛媛大学大学院医学系研究科皮膚科学(佐山浩二教授)講師 現在に至る

    研究内容

    皮膚自然免疫における糖鎖の役割の解明高濃度トレハロースによる皮膚由来細胞への作用の研究

  • 株式会社大塚製薬工場 研究開発センター 藤田 泰毅

    略歴

    1996年 岡山大学薬学部製薬化学科卒業 1998年 岡山大学大学院薬学研究科 修士課程修了 1998年 株式会社大塚製薬工場入社 2023年 徳島大学にて博士(工学)取得(論文博士) 現在に至る

    研究内容

    細胞保存液に関わる研究異種膵島移植に関わる研究

  • 株式会社クラレ ケミカル研究開発部 化学品研究開発グループ 荒井 孝徳

    略歴

    2017年 東北大学理学部化学科卒業 2020年 東京大学大学院農学生命科学研究科 修士課程修了 2020年 株式会社クラレ入社 現在に至る

    研究内容

    多機能保湿剤「イソプレングリコール」の機能探索

  • Department of Civil and Environmental Engineering, Massachusetts Institute of Technology Benedetto Marelli

    略歴

    2005 B.Sc. Biomedical Engineering – Politecnico di Milano – Italy 2008 M.Sc. Biomedical Engineering – Politecnico di Milano – Italy 2012 PhD Materials Science – McGill University – Canada 2012-2015 Postdoctoral Associate – Tufts University 2015-2021 Assistant Professor – MIT 2021-2023 Associate Professor Without Tenure – MIT 2023–present Associate Professor With Tenure

    研究内容

    Structural proteins, polysaccharides, biomacromolecules, directed-assembly, nanomanufacturing, drug delivery, food, agriculture

  • 富山県立大学工学部生物工学科 五十嵐 康弘

    略歴

    1987年 東京大学農学部農芸化学科卒業 1989年 東京大学大学院農学系研究科 修士課程修了 1992年 東京大学大学院農学系研究科 博士課程修了 1992年 富士写真フィルム株式会社入社 1994年 米国ジョンズホプキンス大学医学部 博士研究員 1996年 富山県立大学工学部 助手 1998年 同助教授 2006年 同准教授(職名変更) 2009年 同教授 現在に至る

    研究内容

    微生物からの有用生理活性物質探索と二次代謝多様性の解明

  • 株式会社林原 フードシステムソリューションズ部門 新領域開拓室 向井 和久

    略歴

    1993年 岡山大学農学部総合農業科学科卒業 1995年 岡山大学大学院農学研究科 修士課程修了 1995年 株式会社林原入社 2006年 岡山大学にて博士(農学)取得(論文博士) 現在に至る

    研究内容

    トレハロースの飼料用途開発

座長紹介

  • 徳島大学大学院 社会理工学部 鬼塚 正義

    略歴

    2002年 創価大学工学部生物工学科 卒業 2004年 奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 博士前期課程 修了 2009年 奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 博士後期課程 修了 2009年 大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻生物工学講座 生物化学工学領域 特任研究員 2010年 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部 ライフシステム部門 学術研究員 2014年 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部 ライフシステム部門 特任助教 2016年 徳島大学大学院 生物資源産業学研究部 生物資源産業学部門 助教 2022年 徳島大学大学院 社会産業理工学研究部生物資源産業学域 講師 現在に至る

    研究内容

    バイオ医薬品の生産プラットフォーム開発

  • 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 生物素材開発研究領域 機能利用開発グループ、東京大学大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 応用生物資源分野(兼任) 黄川田 隆洋

    略歴

    1992年 岩手大学農学部農芸化学科卒業 1994年 岩手大学大学院農学研究科農芸化学専攻修了(修士課程) 1994年 農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所入所 2001年 独立行政法人 農業生物資源研究所へ改組 主任研究員 2009年 論文提出により東京工業大学から博士(工学)授与(主査:櫻井実教授) 2015年 東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻 客員准教授を兼任 2016年 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 上級研究員 2019年 同研究機構 主席研究員へ昇任 現在に至る

    研究内容

    ネムリユスリカの極限的な乾燥耐性の分子機構の解明動物細胞の常温乾燥保存技術の開発

開催報告

参加人数 122

第25回トレハロースシンポジウムは無事閉幕いたしました。


各演題発表後の総合討論会では、会場参加者も交えながら演者たちによる意見交換が行われました。その中で、トレハロースの多面的機能にはまだ解明されていないメカニズムが多くあることから、それらの基礎研究が進むことで、よりターゲットを絞った応用研究に発展する可能性についても言及されました。
また、今回は、積極的な意見交換の場としてイブニングセッションを4年ぶりに企画し、メインシンポジウムの内容についてポスターを使って活発な議論が繰り広げられました。

閉会の挨拶

天野 良彦

(信州大学工学部 教授 工学部長/日本応用糖質科学会 会長)

ご講演いただきました6名の先生方、トレハロースの生物に対する大変幅広い機能を御紹介いただきありがとうございました。私も興味を持って聞かせていただきました。
私自身はセルロースの生分解に関する研究をしており、世の中で一番大きい有機物である木質系のセルロースを分解できるのはきのこです。きのこの菌糸が増殖している時はトレハロースを作りませんが、子実体になるとトレハロースをたくさん作ります。これは低温耐性とか様々な目的がありますが、この世の中にトレハロースを供給する役割もあるのかなと思っています。きのこが作ったトレハロースは、我々も含めきのこを食べる動物に供給されますし、今日のお話にあったような根圏の微生物にも関係するでしょう。生物が一度使ったものがいろんなものに巡り巡っていろんな機能に発展するのかなと思った次第です。

先程、総合討論の座長である黄川田先生の方からもありましたが、トレハロースにどうしてこんなに生物学的な機能があるかというのは謎ですが、非常に安定な物質であるというところが非常に重要だと思います。実はセロオリゴ糖も全てのOHがエカトリアルになって非常に安定なものです。ただ、セルロースは残念なことにあまり水に溶けないので、生物に使われることはほとんどありません。トレハロースは水に溶け、構造的に対称性が高く、素晴らしい物質です。さらに林原さんが量産化に成功し、安価に使えるようになったというのが、世の中に普及する一つの大きな要因であると思いました。
トレハロースの機能の発見はまだまだこれからも続くでしょうし、そのメカニズムも明らかになってくると思います。それには、こういう研究に携わる人のネットワークが非常に大事であろうと思っています。このようなネットワークが広がって、トレハロース研究が益々進展することを、祈念申し上げまして、閉会の御挨拶とさせていただきます。

<略歴>
  1. 1982年 信州大学工学部工業化学科 卒業

  2. 1984年 信州大学大学院工業化学専攻 修士課程 修了

  3. 1994年 信州大学大学院工学系研究科博士後期課程 修了

  4. 1995年 信州大学工学部 助手 准教授 教授を経て現在に至る

  5. 2018年 信州大学工学部 工学部長 及び副学部長(兼務)

  6. 2023年 (一社)日本応用糖質科学会 会長就任 現在に至る

<研究内容>

  • バイオマス分解に関わる担子菌類の酵素に関する研究