研究所で酵素反応よるトレハロースの生成技術が確立されたことを受け、生産現場からの技術者を加えた、量産化プロジェクトが始動します。
情報管理を徹底した体制で、特許申請のための追加データの取得や、トレハロースの物性調査・酵素産生菌の培養検討・糖化条件の検討などの生産を実現化するための試験検討が進められました。
製造ラインをつくるにあたり、既存の機械設備を活かせる工程もありましたが、トレハロースを生成する酵素はこれまで扱ってきたその他の酵素と異なり、菌体の内部に産生されるため、工場スケールへの移行には高く困難なハードルを越えなければならない場面もありました。しかし、プロジェクトのメンバーがそれぞれ培ってきた知識とノウハウを出しあい、酵素発見からわずか2年というスピードで量産化のめどが立ちました。
製品化後は、食品向けの用途開発拠点であるL’プラザを中心に、トレハロースの機能性を活かした用途開発が進められました。でんぷんの老化抑制、熱や酸への高い安定性、保水などの効果が明らかになり、徐々に和菓子や洋菓子、加工食品など食品分野でも幅広く使用されるようになりました。
2009年にはトレハロースの専用工場を竣工、2016年には工場の増築を行い、量産体制も強化していきました。
L’プラザではお客さまの課題解決に向けたさまざまな提案も行っています
トレハロース製造工場「岡山機能糖質工場」(2025 年現在) トレハロース開発に込められた想い
丸田研究員はプロジェクト当時を振り返り、上司からかけられた「これはいい仕事になるよ」という言葉が今でも忘れられないといいます。トレハロースの量産化は、ナガセヴィータが創業以来培ってきた糖質製造に関する知見と技術を集結させ、全社一丸となって向き合った挑戦でした。関わった社員にとって、当社創業の原点ともいえる“糖質への探究心”を体現するものとなりました。