柑橘由来のポリフェノール
糖転移ヘスペリジンの研究
ヘスペリジンとは?
ヘスペリジンは、柑橘類に多く含まれるポリフェノールで、ビタミンPとも呼ばれています
出典
伊藤三郎編 『果実の科学』 朝倉書店刊(1991) p.130-143
陳皮とは?
- 漢方の原料(みかんの皮を乾燥させたもの)
- 身体の機能の停滞を改善する理気剤
- ヘスぺリジンは陳皮の有効成分の1つ
ヘスぺリジン(ビタミンP)の発見
毛細血管の抵抗性増強や血管透過性の増大を抑制する効果があることから、透過性を意味する「permeability」のPをとって、ビタミンPと命名されました。
糖転移ヘスペリジン(グルコシルヘスペリジン)とは
糖転移ヘスペリジン(グルコシルヘスペリジン)は柑橘のポリフェノールのひとつであるヘスペリジンにグルコース(ぶどう糖)を1分子、酵素の作用によって付加しています。この「糖転移」によって、水に溶けにくいヘスペリジンが非常に溶けやすくなっていることが糖転移ヘスペリジンの特徴です。
糖転移ヘスペリジンは体内に摂取されると、腸内の酵素によってヘスペリジンに分解され、さらにもう一つの酵素によってアグリコンであるヘスペレチンになり、血中に吸収されます。水溶性の高い糖転移ヘスペリジンは体内への吸収性も向上しています。
糖転移ヘスペリジンの構造式
糖転移ヘスペリジンの特徴
- 高い溶解性
水にもアルコールにも高い溶解性を示します。 - 高い安定性
熱や光に対して安定な素材です。 - 体内に効率よく吸収される
ヘスペリジンに比べて吸収効率が約4倍です。
溶解度 (g / 水 100g) | |
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ヘスペリジン | 0.002 |
糖転移ヘスペリジン | 197 |
糖転移ヘスペリジンの生理機能
- 中性脂肪低減作用
- 血流改善作用
- 冷え軽減作用
- くすみ軽減・敏感肌緩和作用
- 血圧改善作用
- ビタミンC維持作用
- 抗ストレス作用
中性脂肪低減作用
血清中性脂肪値が高めの方の中性脂肪値を低下させました
検証試験
糖転移ヘスペリジン摂取試験を6カ月間実施しました。25名の成人男性(26~65歳)を血清中性脂肪の値で正常型(<110 mg/dL)、境界域型(110-150 mg/dL)、高中性脂肪型(>150 mg/dL)の3グループに分類し、1日あたり500 mgの糖転移ヘスペリジンを就寝前に摂取してもらい、試験期間中の血清中性脂肪を測定しました。
- 結果
- 糖転移ヘスペリジンは高中性脂肪型のグループに対して、血清中の中性脂肪値を低下させました。摂取を中止すると、中性脂肪は開始前の値まで上昇しました。一方、正常型と境界域型のグループに対しては、実験期間を通して変化は認められませんでした。
- 出典
- Miwa Y. et al., J. Nutr. Sci. Vitaminol., 51, 460-470 (2005)
血流改善作用
血流が低下する環境下において手および顔表面の血流を維持しました
検証試験
33-55歳の健康な女性12名を対象にして、二重盲検クロスオーバー試験を実施しました。恒温恒湿室(24℃、50%RH)に30分馴化させた後、糖転移ヘスペリジン50、100、200 mg飲料またはプラセボ飲料を単回摂取させ、摂取前、摂取後15分、30分、45分、60分の計5回レーザードップラーを用いて血流量を測定しました。
- 結果
- 24℃の環境下において、糖転移ヘスペリジン群は、プラセボ群と比較して右手および顔表面の血流量を維持しました。
- 出典
- 溝手ら, 第70回日本栄養・食糧学会大会, 2016
冷え軽減作用
冷えに伴う自覚症状を軽減しました
検証試験
日常的に冷えを感じている男女に対して、8週間継続して糖転移ヘスペリジン500 mg配合タブレットを摂取してもらいました。試験期間中は、1週間ごとに冷えやその他の自覚症状についてスコア調査を行いました。
- 結果
- 糖転移ヘスペリジンを継続的に摂取することにより、冷えを感じにくくなる効果が認められました。また、冷えに伴う自覚症状(肩こり、腰痛、倦怠感)についても良好な結果が得られており、特に倦怠感の程度を軽減することがわかりました。
- 出典
- 安田ら, 日本未病システム学会雑誌, 16, 6-16 (2010)
くすみ軽減・敏感肌緩和作用
皮膚色や肌状態を良好な状態に保ちました
検証試験
35~55歳の健康な女性を対象にして、年齢、色差などが均等になるように無作為にプラセボ群、糖転移ヘスペリジン群に割付し、二重盲検並行群間比較試験を実施しました。1日あたり500 mgの糖転移ヘスペリジンを毎日摂取してもらい、摂取前(0週)と摂取6週間後12週間後に皮膚色および肌状態を評価しました。
- 結果
- 分光測色計を用いて測定したところ、糖転移ヘスペリジン群で、頬部の血流量の指標であるヘモグロビン値の増加とそれに伴う赤みの増加や黄みの低下といった皮膚色変化が認められました。また、専門医のスコア評価では、紅斑、刺激感および掻痒感のスコアが改善しました。
- 出典
- 遠藤ら, 薬理と治療, 43(12), 1687-1699 (2015)
主な研究