このたび、株式会社林原(本社:岡山市北区下石井 社長:森下治)は、新たな機能性糖質製品として水溶性食物繊維『ファイバリクサTM』を2015年11月25日に発売致します。これは新生・林原が発表する初めての新製品です。
『ファイバリクサTM』は、原料の澱粉に酵素を作用させて作った水溶性食物繊維で、昨今注目されている食物繊維不足を補うことを目的とした飲料や食品に幅広く配合できます。
『ファイバリクサTM』の主成分は、多分岐α-グルカンの一種であるイソマルトデキストリンです。このイソマルトデキストリンは、腸内フローラの「えさ」となることが確認されており、腸内環境改善を目的とした各種健康飲料、健康食品などの原料としてご活用いただけます。
製造は、本年8月に本格稼働を開始した岡山第一工場で行います。初年度販売目標は、100トンを予定しています。林原としては、主力商品『トレハR』に次ぐ大型製品に育てるべく、今後活発な販売活動を行っていく予定です。
食物繊維は生活習慣病の予防に重要な役割を果たす栄養素として知られています。日本人の食事摂取基準(2015年版:厚生労働省)によると、1日に必要な食物繊維の目標量は、成人女性で18グラム以上、成人男性で20グラム以上とされています。20代の日本人女性の1日の平均摂取量が11.5グラムですので、日常的に食物繊維が不足しているといえます。普段の食生活で十分に摂取することが理想ですが、推奨される量を摂取することは容易ではなく、積極的に食物繊維を取り入れることを心がけなければ、十分な量の摂取は難しいといえます。この食物繊維不足を補うために、普段の食生活に手軽にプラスできる食品として、多くのファイバー製品が販売されており、飲み物やスープなどに混ぜて摂取することが一般的によく行われています。
澱粉から製造される『ファイバリクサTM』は、グルコースのみから構成される多分岐α-グルカンの一種であるイソマルトデキストリンを95%以上含有しています。食物繊維量は固形分当たり80%以上で、消化液や消化酵素で分解されにくい糖質です。甘さはほとんどなく、食品に配合しても素材の味を損ねないという特長があり、これらの特長から、幅広い食品・飲料に配合することができます。溶解性にも優れ、食物繊維を強化することを目的に様々な食品に配合し、容易に摂取することが可能です。
『ファイバリクサTM』の主成分であるイソマルトデキストリンには、整腸作用や腸内フローラを改善する作用が確認されています。1週間の排便回数が2~4回の成人女性10名にイソマルトデキストリンを4週間、毎食時10 g摂取させ、対照群(マルトデキストリン摂取群)と比較しました。その結果、排便日数は、摂取前の平均3.3日から4.4日に増加、排便量は、摂取前の鶏卵Lサイズ換算8.18個分から12.7個分に増加しました。また、腸内のビフィズス菌占有率も、対照群に比べ有意に増加しました。
さらにラットを用いた試験では、イソマルトデキストリンを3.3%, 6.7%, 10.0% 含む飼料を与えて2週間飼育しました。2週間後に盲腸内容物中のビフィズス菌、ファーミキューテス門、バクテロイデス門の細菌数を測定した結果、イソマルトデキストリン6.7%以上の群で、善玉菌の代表であるビフィズス菌数が対照群(イソマルトデキストリン0%)と比較して約100倍増加しました。また肥満に関連すると報告されているファーミキューテス門細菌数(F)とバクテロイデス門細菌数(B)の比率(F/B比率)は、対照群の3.82に対して、イソマルトデキストリン3.3%の群で1.82に、さらに6.7%の群で0.47に低下し、太りにくいと報告されている腸内細菌バランスに改善されていることが確認できました。
■『ファイバリクサTM』製品仕様
・製品規格(抜粋) | |
性状 | 白色粉末 |
乾燥減量 | 8.0%以下 |
pH(10%水溶液) | 3.5~6.5 |
純度 | 95%以上(固形分当り) |
食物繊維(酵素-HPLC法) | 80.0%以上(固形分当り) |
・エネルギー | 2kcal/g |
・荷姿 | 20kg入りクラフトバック(内装ポリエチレン) |
・保存方法 | 直射日光、高温多湿な場所、過積を避け、室温で保存 |
・賞味期限 | 製造後2年 |
・表示例 | イソマルトデキストリン、食物繊維、水溶性食物繊維 |
・用途 | 食物繊維強化、腸内フローラ改善 |
■『ファイバリクサTM』とは・・・
林原が独自に開発した酵素の働きにより、澱粉から製造される水溶性食物繊維の商品名です。「ファイバリクサTM」は多分岐α-グルカンの一種であるイソマルトデキストリンを95%以上含有します。イソマルトデキストリンは原料である澱粉に比べ、枝分かれ構造を多く有しており、消化されにくいという性質を持っています。そのため、「ファイバリクサTM」は固形分当たり80%以上という高い食物繊維含量を示します。デキストリンの特性を示すDE値は7、重量平均分子量は5,000で、カロリーは2kcal/gです。製造中に酸触媒下での高温加熱がないため、粉末の色は白く、水溶液の透明度は高く、また、溶解性にも優れ、20℃の水100gに対し、70g以上溶解します。糊臭が少なく、甘さはほとんどない(砂糖の20分の1程度)ため、食品に配合しても素材の味を損ねません。
※DE値(Dextrose Equivalent):グルコース当量・・・澱粉の分解度を表す尺度。完全に分解されすべてがグルコースになった場合、DE値は100となる。甘味についても相関があり、DE値が高いほど甘い。
■『ファイバリクサTM』の特性と用途
『ファイバリクサTM』は白色の粉末で水に良く溶けます。水溶液は澄明で粘度は低く、作業性に優れています。甘さはほとんどなく、加熱・冷凍・冷蔵・酸に対して非常に安定であることから、飲料・食品に無理なく配合できます。『ファイバリクサTM』は、食物繊維強化目的ではもちろんのこと、主成分であるイソマルトデキストリンの腸内フローラ改善作用の活用目的でも利用いただける食品素材です。
■使用例
分野 | 使用例 |
飲料 | 炭酸飲料、茶飲料、鉄含有飲料、酢飲料 etc. |
製菓・デザート | キャンディ、クッキー、プリン、ゼリー、栄養バー etc. |
乳製品 | ヨーグルト、乳酸菌飲料 etc. |
主食 | 米飯、パン、麺 etc. |
調理加工 | スープ、トマトソース、唐揚げ、天ぷら etc. |
■イソマルトデキストリンの整腸作用および腸内フローラ改善作用
≪排便日数、排便量、腸内のビフィズス菌占有率≫
(ヒト試験)1週間の排便回数が2~4回の成人女性10名にイソマルトデキストリンを4週間、毎食時10 g摂取させ、対照群(マルトデキストリン摂取群)と比較しました。その結果、排便日数および排便量、腸内のビフィズス菌占有率のいずれも有意に増加しました。
≪ビフィズス菌増殖能に優れ、主要細菌2門間の比率を効率的に低下≫
(ラット試験)ラットにイソマルトデキストリンを 3.3%, 6.7%, 10.0% 含む飼料を与えて2週間飼育しました。2週間後に盲腸内容物中のビフィズス菌、ファーミキューテス門、バクテロイデス門の細菌数を測定しました。その結果、イソマルトデキストリン6.7% 以上の群で、善玉菌の代表であるビフィズス菌数が対照群(イソマルトデキストリン0%)と比較して約100倍増加しました。また肥満に関連すると報告されている、ファーミキューテス門細菌数(F)とバクテロイデス門細菌数(B)の比率(F/B比率)は、イソマルトデキストリン3.3%以上の群で対照群よりも有意に低下しました。
○「腸内フローラ」について
ヒトの腸内には100兆個の細菌が棲んでいるといわれており、その種類は百種類以上といわれています。これらの腸内細菌はさまざまなグループに分けることができ、その多様な様子を草花が自然に咲き誇るお花畑(フローラ)にたとえ「腸内フローラ」と呼ばれています。なお、「腸内フローラ」は学術的には「マイクロバイオーム」と呼ばれるのが一般的です。近年、「腸内フローラ」と健康のかかわりについての研究が多数行われており、それらの結果から、「腸内フローラ」の改善は単なる整腸効果にとどまらず、例えば、炎症性腸疾患、動脈硬化、がんなどに密接に関連していることが報告されています(実験医学 増刊 Vol.32, No.5(2014))。
○「腸内フローラ」のバランスと肥満に関する報告
2000年代に入ってから「腸内フローラ」の分析技術が進歩し、様々なことがわかるようになってきました。その中には、「腸内フローラ」のバランスが肥満に関与しているという報告があります。
「腸内フローラ」の分類方法として、門レベルでの分類があります。ファーミキューテス門(F)とバクテロイデス門(B)は「腸内フローラ」を形成する主要なグループであり、FとBを合わせると「腸内フローラ」の9割を占めるといわれています。2006年にワシントン大のジェフリー・ゴードン博士らのグループが、FとBのバランスが肥満に関与していることを報告しました(Nature 444, 1022-1023(2006))。具体的には、肥満の方に食事制限を行い、体重を徐々に減らしていくと、それに相関してFの菌数をBの菌数で割った数字(F/B比率)が低下していった、というもので、体重の減少とF/B比率の低下には正の相関がありました。2013年には別の研究グループが、F/B比率と肥満に関連性があることを報告しています(Obesity 21, E607-E615(2013))。彼らは、肥満の方と肥満でない方のグループの腸内フローラをそれぞれ解析しました。その結果、肥満のグループでは肥満でないグループに比べてF/B比率が有意に高く、肥満度を示す指数(BMI)が高くなるにつれてF/B比率も高くなる傾向であることを示しました。これらの結果は「腸内フローラ」の主要グループのバランスは肥満と関連性があることを示しています。