ニュースリリース 2024年

2024.04.18
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環境配慮型農業の実現と高温下での安定生産、地産地消野菜による地域貢献及び地域活性化をめざし、微生物農業資材を用いた大阪産(もん)の減肥料栽培の共同研究を開始

ナガセケムテックス株式会社(大阪府大阪市 代表取締役社長 藤井 悟 以下ナガセケムテックス)と地方独立行政法人大阪府立環境農林水産研究所(大阪府羽曳野市 理事長 石井 実 以下、大阪環農水研)は、1.減肥料栽培による環境配慮型農業の実現 2.高温下での安定生産 3.地産地消野菜による地域貢献及び地域活性化をめざし、ナガセケムテックスが開発を進めている純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材をなにわの伝統野菜「難波葱」に適用する共同研究を開始します。


1.背景と目的


かつての日本の農地では、植物の生育に不可欠であるリン酸が少なかったため、国内の畑地ではリン酸肥料が多く用いられてきました。しかし、リン酸肥料を投入し続けたため、現在ではリン酸が過剰に蓄積しているうえに、水系の富栄養化などを引き起こしています。


また一方で、このリン酸肥料の原料であるリン鉱石は、国内ではほぼ輸入に頼っているため、価格が国際動向の影響を受けやすく、2022年に高騰しました。そればかりか、リン鉱石の加工と輸送には多くの化石燃料を使用するため、気候変動への影響が懸念されます。昨今の気候変動による温暖化は各地で農作物の品質低下を招き、農家経営を圧迫しかねない深刻な状況となっています。これらの問題の対応策の一つとして、アーバスキュラー菌根菌(※1)を利用したリン酸減肥技術が古くから注目されています。


しかし、アーバスキュラー菌根菌を圃場で複数年に渡って施用した例は少ないため、多くの農家は経営上のリスクを考慮して、従来の栽培方法を切り替えにくいという課題がありました。


この課題を解決するため、ナガセケムテックスは2023年度に、大阪環農水研に委託して圃場栽培研究をスタートしました。


2023年度の圃場試験ではナガセケムテックスが開発を進めている純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材(※2)を適用した難波葱(※3)を大阪環農水研の試験圃場で栽培し、慣行栽培と比較しました。その結果、リン酸施肥を低減しても収量は低下しませんでした。また、本研究では試験栽培中、例年になく気温が高い状況が続きましたが、こうした高温下の環境でも平年の慣行栽培と比較して一定の増収効果を得ることができました。


そこで、2024年度からは、先行の委託研究の再現性並びに年次変動の確認、実証を行うため、研究形態を単年度の受委託から、両者による共同研究へと切り替えて、継続的、本格的に進めていくこととしました。


2.共同研究内容


この共同研究では、両者の研究担当者が知見を持ち寄り、純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材を施用した難波葱を、露地の高温下で、リン酸施肥を段階的に減らした圃場に定植し、収量・品質を調査します。


あわせて、大阪環農水研が栽培前後の土壌中のリン酸を含む各栄養素を測定、ナガセケムテックスがアーバスキュラー菌根菌の定着を評価することで、難波葱栽培における純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材の有用性と土壌中の養分の蓄積・減少を評価していきます。


そして、これらのデータを複数年に渡って取得した後に慣行栽培と比較することで、リン酸施肥を何割削減できるか、そして投入した資材の効果が何年継続するか(再現性、年次変動)を評価していきます。


こうした研究によって、純粋培養アーバスキュラー菌根菌を利用した減肥栽培による環境配慮型農業を、高温下において安定生産を実現する栽培方法として構築・確立していきます。さらに、この栽培技術を難波葱という大阪の特産品に適応することで、地産地消を促進して、地域貢献及び地域活性化をめざしていきます。


環境配慮型農業のイメージ


用語の解説


※1 アーバスキュラー菌根菌


アーバスキュラー菌根菌とは、土壌微生物(真菌)で植物の根と共生することで、植物側に主に無機栄養素(特にリン)と水分を供給し、生育を促進します。理想的な条件では植物の根が吸収するリン酸よりも20倍以上のリン酸を吸収して植物に与えます。


※2 純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材:


通常、アーバスキュラー菌根菌は植物との共生関係でのみ増殖するために単独で増殖することが難しい状況でした。そのため、現在土壌改良資材として市販されている多くのアーバスキュラー菌根菌資材は植物との共生培養で生産されているものが一般的であり、生産効率が良くありませんでした。ナガセケムテックスはアーバスキュラー菌根菌の純粋培養技術により大量に安価に製造する開発を進めています。


※3 難波葱


2017年3月、大阪府に「なにわの伝統野菜」として認証された野菜。強い甘みと香りとぬめりが特徴。


※4 大阪産(もん)


大阪府内で生産された農林水産物とそれらを使った加工品のこと。ロゴマークを使用する際は、大阪府への申請が必要。


3.本件に関する報道機関からのお問い合わせ先


  • (報道に関して)経営企画本部 サステナビリティ推進室 TEL:0791-63-4902

  • (研究に関して)機能樹脂事業部 未来PJ室 TEL:0791-63-2772