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  4. 金属に使用する高耐熱性エポキシ樹脂

金属部品の接着や電子機器の絶縁・保護には、高温環境に耐えられるエポキシ樹脂が欠かせません。
ここでは、金属に使用する高耐熱性エポキシ樹脂の種類や用途、使用上のポイントを詳しく解説します。


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目次

  1. デナコール|高耐熱性エポキシ樹脂
  2. 金属に使用する高耐熱性エポキシ樹脂の用途
  3. 金属に使用する高耐熱性エポキシ樹脂の種類
  4. 金属に使用する高耐熱性エポキシ樹脂に求められるもの

デナコール|高耐熱性エポキシ樹脂

デナコールは、幅広いラインナップを持ち、さまざまなシーンで活用されています。

特長

デナコールは、アルコール性水酸基やカルボン酸をグリシジルエーテル化(エステル化)した特殊なエポキシ化合物です。単官能から多官能まで幅広いラインナップをそろえ、水溶性タイプを多数展開しているのが特長です。水系での取り扱いに適しており、VOCフリー化にも対応できます。

加えて、植物由来原料を用いたバイオベースグレードは、環境負荷の低減とサステナブル素材への転換を両立する、次世代型エポキシ化合物として注目されています。


ラインナップ

デナコールシリーズは、目的に応じて、最適なグレードを選べるのが大きな特長です。
多官能タイプは、多数のエポキシ基を有しているため強固な3次元架橋ネットワークを構築でき、寸法安定性・耐熱性・耐薬品性の向上が期待できます。金属接着や改質用途に有効です。

低塩素タイプは、塩素含有量を大幅に低減したグレードで、電子材料や塗料などで塩素起因の劣化・腐食が問題になる場合に適しています。多官能から単官能までラインナップがあり、塩素含有量が最も少ないタイプは100ppmです。

グリーンデナコール(高バイオベースタイプ)は、植物由来原料を活用し、従来の石油系資源からの切り替えを目指したサステナブル対応のシリーズです。バイオマス度99%以上を示すグレードもあり、環境規制・作業環境配慮・企業のSDGs対応といった観点でも有効な選択肢となります。


金属用途での活かし方

多官能エポキシによる架橋密度の向上は、耐熱性・寸法安定性を高める一方、過剰になると脆化を招くため、可とう性付与剤やポストキュア条件とのバランスが重要です。耐熱・耐候コーティングにおいても高い性能が得られます。段階硬化やポストキュアの組み合わせによって、ガラス転移温度向上も可能です。

水溶性エポキシ樹脂は、接着力や耐腐食性、耐薬品性の向上が期待できます。例えば、金属表面へのコーティング剤として水溶性エポキシ樹脂を応用した場合、固体表面に親水性を付与し、表面に付着した液滴による腐食を防ぐことが可能です。

つまり、脱脂→含浸→水系塗布といった金属前処理ラインにおいて、水溶性タイプを採用することで工程適合性が高まり、さらにVOC低減にもつながります。

金属用途における腐食・剥離リスクの主要因子である塩素イオンやナトリウムイオン、水分侵入に対しては、低塩素グレードの活用が有効です。塩素含有量を極力低減したグレードの選定により、イオンに起因する腐食リスクを大幅に抑制できます。


金属に使用する高耐熱性エポキシ樹脂の用途

高耐熱性エポキシ樹脂はさまざまなシーンで活用されています。

構造接着・補強

自動車ボディ、産業機器のフレーム、航空機の金具などの部品は高温環境に晒されるため、接着層のガラス転移温度(Tg)や耐熱仕様を十分に上回る性能が求められます。

一般的に、材料のTgは、実際の使用温度より30~50°C高い範囲で選定することが推奨されます。これは、使用中の温度上昇・熱サイクル・残留応力などに対し、接着材がプラスチック状化・剛性低下・剥離・クラックなどを回避するためです。

高耐熱性エポキシ樹脂は、機械的強度・寸法安定性・耐熱耐薬品性に優れることから、構造接着・補強などの分野で不可欠な材料となっています。

構造接着・補強

電気・電子/モータ・インバータ

電気機器のコイルや端子を保護するエポキシ樹脂は、電子部品を包む鎧のような役割を果たします。モータやインバータでは、銅線のコイルや金属端子が高温・湿気・振動にさらされるため、樹脂による保護が不可欠です。

最も重要なのは絶縁性能です。樹脂に不純物(塩素やナトリウムなどのイオン)が混入すると、湿気に溶解して電気の通り道を作り、金属腐食や絶縁性能低下を引き起こします。

耐トラッキング性を確保するためには、低イオン・低吸湿設計のエポキシが有効です。

また、モータの発熱対策として樹脂に熱伝導フィラーを混ぜますが、配合バランスを間違えると樹脂が硬くなりすぎて割れやすくなるため、注意が必要です。

電気・電子/モータ・インバータ

表面保護・塗膜

金属の表面を保護する塗膜用途では、コイルコーティング、配管・熱交換器向け耐熱塗膜、粉体塗装バインダーなどに高耐熱性エポキシ樹脂が使われています。

これらの用途では、金属の前処理が重要な役割を果たします。脱脂で油分を除去し、サンドブラストで表面を粗くし、リン酸亜鉛処理 などの化成皮膜を形成することで、塗膜の密着性が大幅に向上します。

焼付温度と時間を最適化することで、金属と塗膜の熱膨張差による剥離を防ぎ、長期信頼性を確保できます。

表面保護・塗膜

シール・耐薬品

高耐熱性エポキシ樹脂は、化学プラントの配管ガスケットや熱交換器のシール材など、高温環境で油・ガス・薬品から金属を保護する役割を担っています。

高温では金属とエポキシ樹脂の熱膨張差により、シール層の剥離やひび割れが発生しやすくなります。この問題を解決するため、ゴム変性により柔軟性を付与し、温度変化による金属の伸び縮みに追従できるようにします。また、シリカやアルミナなどの無機フィラーを充填することで、熱伝導性と寸法安定性を向上させ、熱膨張差を抑制します。

シール・耐薬品

金属に使用する高耐熱性エポキシ樹脂の種類

金属用途における高耐熱性エポキシ樹脂の選択は、求められる性能と使用環境によって決まります。汎用的なビスフェノール系から超高耐熱のノボラック系まで、樹脂タイプごとに特徴が異なり、硬化剤との組み合わせによってさらに性能が変化します。


樹脂タイプ(例)

金属用途で使われる高耐熱性エポキシ樹脂は、使用環境や求められる性能に応じてさまざまなタイプが存在します。


樹脂タイプ 主な特徴 ポイント
ビスフェノールA/F系 ・最もポピュラーなエポキシ骨格
・高Tg(180~200 °C)
・構造接着・金属補強などに最適
・「バランス重視」設計に有効
(接着性×耐熱性×加工性)
ノボラック系 ・フェノールノボラック骨格
・多官能化可能で架橋密度が高い
・Tg・耐薬品性・寸法安定性に優れる
・高温・高負荷・長期信頼性用途
(例:航空・産機フレーム)
・高Tg・高耐薬品性の設計に有効
脂環式エポキシ ・低極性で耐湿・耐候・電気絶縁性が高い ・金属・電子部品・モータ含浸・
コーティング用途に有効
・高絶縁・耐湿・耐候要求に対応
多官能脂肪族エポキシ ・脂肪族骨格+多官能エポキシ基
・高架橋性と可とう性の両立
・低VOC/低塩素グレードも存在
・熱膨張差や振動のある構造用接着・含浸・塗膜に
適す
・「ひずみ追従×高耐熱性」設計に有効
水溶性エポキシ/低塩素タイプ ・水溶性で水系処理・含浸に適合
・低塩素設計で金属腐食リスクを低減・環境対応(低VOC)
・金属前処理・水系塗布工程・電子部品近傍など
・環境・腐食対策・作業性を重視する用途に有効

硬化剤タイプ(系統)

金属用途で使われる高耐熱性エポキシ樹脂は、使用環境や求められる性能に応じてさまざまなタイプが存在します。

比較項目 芳香族アミン/酸無水物系 イミダゾール/潜在性硬化剤系
硬化温度 中〜高温域(80〜170 °C)で反応が進む。加熱が必要だが、しっかりとした高分子構造を形成できる。 加熱すると一気に反応が進む。常温では安定で、80〜180 °C程度で硬化が始まる。
特徴的性能 架橋密度が高く、高Tg・高耐熱性・高耐薬品性を発現。長期的な強度保持や化学安定性に優れる。 高反応性・速硬化性が特長。熱をかけると短時間で硬化し、Bステージ(半硬化)処理も可能。保存性にも優れる。
プロセス適性 段階的に硬化させる「ステップキュア」や、最後に高温で完全硬化させる「ポストキュア」が効果的。残留応力を抑えながら高性能を得やすい。 作業時間を確保しやすく(長ポットライフ)、一度加熱すれば短サイクルで硬化が完了。量産・自動化ラインに向く。
主な用途 高温環境や高荷重下で使う構造接着や金属塗膜など。例:航空機部品、自動車ボディ補強、金属フレーム接着。 電子部品、モータ、インバータの封止・含浸など。例:コイル絶縁、端子封止、基板含浸。
注意点 ・高温硬化のため、加熱炉・温度制御設備が必要。
・硬化時の残留応力に注意。
・ポストキュア条件を最適化する必要あり。
・加熱で一気に反応が進むため、温度管理に注意

金属に使用する高耐熱性エポキシ樹脂に求められるもの

金属用の高耐熱性エポキシ樹脂を選定・設計する際には、使用環境に応じた複数の条件を満たす必要があります。

耐熱性指標

金属用の高耐熱性エポキシ樹脂を選ぶときは、主にTg、荷重たわみ温度(HDT)、連続使用温度、短時間ピーク耐性という4つの耐熱性指標を使用環境に合わせて検討します。

実際の設計では安全マージンが重要で、連続使用温度はTgより30~50℃低く設定するのが基本です。例えばTgが150℃なら、連続使用は100~120℃までに抑えます。

なお、Tgは測定方法や条件によって値が変わるため、指定書には測定方法(DSC、DMAなど)、測定条件(昇温速度、試料状態など)を確認しましょう。


金属界面の信頼性

金属にエポキシ樹脂を接着する際には、2つの重要なポイントがあります。

1つ目は密着性の向上です。金属表面の油分や汚れを脱脂で除去し、サンドブラストで表面を粗くして接着面積を増やし、リン酸亜鉛処理などの化成皮膜を形成することで、金属とエポキシ樹脂の間に強固な結合を作ります。

2つ目は熱膨張差による応力の抑制です。エポキシ樹脂の熱膨張率は金属の4~10倍も大きいため、温度変化時に接着界面に大きな応力が発生し、クラックや剥離の原因となります。この問題を解決するため、エポキシ樹脂にゴム成分を混ぜて柔軟性を持たせたり、シリカやアルミナなどの無機フィラーを添加して熱膨張率を金属に近づけます。


耐食・低イオン管理

金属にエポキシ樹脂を使用する際、製造過程で残留する塩素イオンやナトリウムイオンが金属腐食の原因となります。これらの微量イオンは、湿気のある環境で金属表面に電気の通り道を作り、腐食を加速させてしまいます。

また、金属の前処理工程でも、洗浄水や薬品からのイオン混入を最小限に抑える管理が重要です。工程全体を通じたイオン管理により、長期間にわたって金属とエポキシ樹脂の密着性を維持し、腐食の進行を防ぐことができます。


環境・安全・プロセス

金属用途でのエポキシ樹脂使用では、環境配慮、安全管理、プロセス最適化の3つの観点が重要です。

環境面では、水溶性エポキシ樹脂の採用により有機溶剤の使用量を大幅に削減できます。デナコールの水溶性タイプは、環境負荷を低減しながら金属との密着性や耐食性を向上させることが可能です。

安全管理では、硬化前のエポキシ樹脂やアミン系硬化剤が皮膚炎や視覚障害を引き起こす可能性があるため、手袋や保護眼鏡の着用、十分な換気、大量混合時の発熱管理が必須となります。

プロセス最適化では、段階硬化とポストキュアの組み合わせが効果的です。低温での初期硬化後に高温で追加硬化を行うことで耐熱性と寸法安定性が向上しますが、硬化収縮による内部応力とのバランスを考慮した温度設定が重要になります。


評価・規格

金属用高耐熱性エポキシ樹脂の性能評価では、複数の試験を組み合わせて総合的に判断します。基本となる高温後の接着強度測定に加え、温度変化による熱膨張差の影響、高湿度環境での密着性低下、塩水による腐食リスク、電気用途での絶縁性能劣化を各種試験で確認します。

さらに、長期耐熱性の指標値を参考にし、最終的には実際の使用条件に近い環境での評価を行うことで、初期性能だけでなく長期間の安定性まで含めた実用的な性能確認が可能になります。

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