「ハロゲンフリーエポキシ樹脂」について
ハロゲンフリーエポキシ樹脂とは何か?
ハロゲンフリーエポキシ樹脂とは、ハロゲン含有量の少ないエポキシ樹脂です。
ここでは、ハロゲンフリーエポキシ樹脂の規格や重要性について説明します。
ハロゲンフリーの規格
ハロゲン含有量が規定で定められた量より少ないものを、ハロゲンフリーと呼びます。
国際電気化学委員会(IEC)により、「IEC 61249-2-21」と呼ばれる基準で定められています。
● 塩素 ≤ 900 ppm
● 臭素 ≤ 900 ppm
● 総ハロゲン ≤ 1500 ppm
なぜ重要性が高まっているのか?
通常のエポキシ樹脂を使用すると、含有するハロゲン化合物に由来するトラブルが発生する可能性があります。
例えば、プリント基板を長期で使用した場合、ハロゲンの生成により配線が腐食されてしまい絶縁特性が低下します。
また、燃焼時や硬化プロセス中にハロゲン由来の有害ガスが発生してしまうことで、健康被害や大気汚染につながる可能性があります。
EUではリサイクル規制の観点から、ハロゲンが含まれる難燃剤の使用制限があります。
このように、製品の信頼性や人や環境への配慮が求められており、ハロゲン含量の少ないハロゲンフリーエポキシ樹脂の重要性が高まっています。
ハロゲンフリーエポキシ樹脂を電子材料分野で使用するメリット
ハロゲンフリーエポキシ樹脂を電子材料分野で使用すると、「製品の信頼性」、「環境や安全面」においてメリットがあります。
信頼性の向上
電子機器の基板などでハロゲンフリーエポキシ樹脂を使用することにより、ハロゲンが原因となる腐食を避けることが出来ます。
そのため、従来のエポキシ樹脂よりも信頼性向上につながり、長期間の使用が可能になります。
環境面でのメリット
ハロゲンフリーエポキシ樹脂を使用することで使用時や燃焼時の、有害物質や有害ガスの発生が抑えられ、地球環境の汚染や人体への悪影響を増やさないようにできます。
EUでは、2006年7月1日以降RoHS指令(Restriction of Hazardous Substances Directive)に制定された内容は、電子機器に使用する部品や材料には、鉛や水銀、カドミウムなどの有害物質が含まれないことを義務付けられています。
環境への負荷の少ない材料を使用することは、消費者からの信頼も高まり企業の商品への価値を高めることもできるでしょう。
デナコールの「低塩素エポキシ樹脂タイプ」とその使用用途について
デナコールは低塩素タイプのグレードがあり、塩素含量最小100ppmから5000ppmまでの製品があります。その使用用途として、「反応性希釈剤」「樹脂安定剤」「接着剤」があります。
それぞれの用途について説明します。
反応性希釈剤
反応性希釈剤は、高粘度のエポキシ樹脂の特性を大きく損なうことなく低粘度化し、取り扱い性を高めるために使用されます。
特に電子材料では、塩素の発生による品質低下が懸念されるため、低粘度のハロゲンフリーエポキシ樹脂が反応性希釈剤として適しています。
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樹脂安定剤
樹脂安定剤は、エポキシ樹脂の成形加工時や使用時の劣化を抑えるために使用されます。
例えば、エアコンの冷凍機油にハロゲンフリーエポキシ樹脂を使用すると、オイル品質の保持や発生する塩素による配管内部のサビを抑え、劣化防止に役立ちます。
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接着剤
接着剤は、プリント基板中の部材の固定のために使われます。
ハロゲンフリーエポキシ樹脂を使用することで、塩素の発生による品質低下を防止することができます。
低塩素タイプのデナコールの紹介
ここでは、低塩素タイプのデナコールを官能タイプ別に紹介します。
用途に合ったデナコールを選び、使用を検討してみてください。
多官能タイプ
多官能タイプには「EX-321L」と「EX-1610」があります。
EX-321L
本製品は、 トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルという多官能脂肪族エポキシ化合物です。多官能、疎水性でありながら低粘度の特性を持ち、さらに高反応性な点から電子材料向けの反応性希釈剤としてご使用いただけます。
SWIPE
エポキシ当量(g/eq.) | 粘度 (mPa・s) |
全塩素含量(%) | 色価 (APHA) | 水溶率(%) | 包装 |
---|---|---|---|---|---|
130 | 300 | 0.3 | 30 | 不溶 | 18kg |
EX-1610
本製品は、多官能脂肪族エポキシ化合物です。構造は非開示ですが、高水溶性、高反応性の特性を持ち、塗料や粘着剤の架橋剤としてご使用いただけます。
SWIPE
エポキシ当量(g/eq.) | 粘度 (mPa・s) |
全塩素含量(%) | 色価 (APHA) | 水溶率(%) | 包装 |
---|---|---|---|---|---|
170 | 2,200 | 0.5 | 1 | 100 | 18kg |
2官能タイプ
2官能タイプには「EX-212L」「EX-214L」「EX-810P」「EX-991L」「EX-201-IM」があります。
EX-212L
本製品は、 1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルという2官能脂肪族エポキシ化合物です。疎水性で低粘度の特性があり、電子材料向けの反応性希釈剤としてご使用いただけます。
SWIPE
エポキシ当量(g/eq.) | 粘度 (mPa・s) |
全塩素含量(%) | 色価 (APHA) | 水溶率(%) | 包装 |
---|---|---|---|---|---|
135 | 15 | 0.4 | 40 | 不溶 | 18kg |
EX-214L
本製品は、 1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルという2官能脂肪族エポキシ化合物です。水溶性で低粘度の特性に加え、柔軟性も持ち、電子材料向けの反応性希釈剤としてご使用いただけます。
SWIPE
エポキシ当量(g/eq.) | 粘度 (mPa・s) |
全塩素含量(%) | 色価 (APHA) | 水溶率(%) | 包装 |
---|---|---|---|---|---|
115 | 15 | 0.3 | 1 | 100 | 18kg、200kg |
EX-810P
本製品は、エチレングリコールジグリシジルエーテルという2官能脂肪族エポキシ化合物です。水溶性と低粘度、柔軟性を持つことから、電子材料向けに水溶性樹脂架橋剤や親水性付与剤、柔軟性付与剤としてご使用いただけます。
SWIPE
エポキシ当量(g/eq.) | 粘度 (mPa・s) |
全塩素含量(%) | 色価 (APHA) | 水溶率(%) | 包装 |
---|---|---|---|---|---|
95 | 10 | 0.01 | 10 | 100 | 20kg |
EX-991L
本製品は、構造非開示の2官能エポキシ化合物です。疎水性で柔軟性を持つため、電子材料向けの樹脂架橋剤や柔軟性付与剤としてご使用いただけます。
SWIPE
エポキシ当量(g/eq.) | 粘度 (mPa・s) |
全塩素含量(%) | 色価 (APHA) | 水溶率(%) | 包装 |
---|---|---|---|---|---|
450 | 180 | 0.1 | 200 | 不溶 | 18kg |
EX-201-IM
本製品は、レゾルシノールジグリシジルエーテルという2官能エポキシ化合物です。疎水性の特徴を持ち、電子材料向け接着剤にご使用いただけます。
SWIPE
エポキシ当量(g/eq.) | 粘度 (mPa・s) |
全塩素含量(%) | 色価 (APHA) | 水溶率(%) | 包装 |
---|---|---|---|---|---|
120 | 400 | 0.06 | 5 | 不溶 | 20kg |
単官能タイプ
単官能タイプには「EX-121」「EX-141」「EX-142-IM」「EX-146P」があります。
EX-121
本製品は、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルという単官能脂肪族エポキシ化合物です。疎水性で低粘度の特徴を持つことから、樹脂安定剤や反応性希釈剤としてご使用いただけます。
SWIPE
エポキシ当量(g/eq.) | 粘度 (mPa・s) |
全塩素含量(%) | 色価 (APHA) | 水溶率(%) | 包装 |
---|---|---|---|---|---|
187 | 4 | 0.01 | 10 | 不溶 | 16kg、180kg |
EX-141
本製品は、フェニルグリシジルエーテルという単官能エポキシ化合物です。疎水性と低粘度の特徴を持つことから、樹脂安定剤や反応性希釈剤としてご使用いただけます。
SWIPE
エポキシ当量(g/eq.) | 粘度 (mPa・s) |
全塩素含量(%) | 色価 (APHA) | 水溶率(%) | 包装 |
---|---|---|---|---|---|
151 | 8 | 0.02 | 10 | 不溶 | 18kg、200kg |
EX-142-IM
本製品は、 2-フェニルフェノールグリシジルエーテルという単官能エポキシ化合物です。疎水性で他の単官能タイプと比べると粘度が高いことから、電子材料向け反応性希釈剤や樹脂安定剤としてご使用いただけます。
SWIPE
エポキシ当量(g/eq.) | 粘度 (mPa・s) |
全塩素含量(%) | 色価 (APHA) | 水溶率(%) | 包装 |
---|---|---|---|---|---|
240 | 290 | 0.03 | 70 | 不溶 | 18kg |
EX-146P
本製品は、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテルという単官能エポキシ化合物です。疎水性で低粘度の特徴を持つことから、電子材料向け反応性希釈剤としてご使用いただけます。
SWIPE
エポキシ当量(g/eq.) | 粘度 (mPa・s) |
全塩素含量(%) | 色価 (APHA) | 水溶率(%) | 包装 |
---|---|---|---|---|---|
210 | 17 | 0.01 | 1 | 不溶 | 18kg |
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