「エポキシ樹脂反応性希釈剤」について
エポキシ反応性希釈剤とは?
反応性希釈剤とは、一般的に高粘度の樹脂を低粘度に調節するために使用されます。よく知られる希釈剤には、「シンナー」があり、作業性の向上が目的です。
エポキシ反応性希釈剤は、硬化時の化学反応によって分子中に希釈剤のもつエポキシ基が取り込まれるため、本来の性能低下を抑えながら粘度調節を可能にします。
希釈剤には、反応性希釈剤と非反応性希釈剤の2つに分類できます。非反応性希釈剤は、硬化時に樹脂ネットワークに取り込まれず粘度を低下させ、可塑剤と同じ役目を持つ希釈剤です。
市場成長予測
世界の反応性希釈剤の市場は、2020年には約9億5,204万米ドルとなり、2021年から2027年の予測期間には6.6%以上の成長が見込まれています。
特に、アジア太平洋地域での建設・工業分野での投資が増え、人口増加によってインフラ設備の増加も見込まれているため、対象地域の中でも市場シェアとなる重要な地域として捉えらえています。
このことからも、2020～2027年の期間には、他の海外地域と比べて、最も高い成長が示されるだろうとの予想です。
エポキシ樹脂への影響
エポキシ反応性希釈剤を使うことで、エポキシ樹脂はどのような変化や影響が見られるのでしょうか。ポジティブな変化と影響によって、扱いやすくなりより幅広い使用が可能になります。
1. 粘度の低下
エポキシ樹脂は通常、高粘度の物質です。それゆえ、扱いにくさを感じる場面も存在します。例えば、塗料やコーティング剤を目的とする場合に、希釈剤を使用することで、作業性が改善され効率もアップします。
希釈剤の分子内に存在する官能基の数が、モノ、ジ、トリと増加し希釈剤自体の粘度が高まることで、粘度を低下させる力は弱まることが特徴です。
2. 機械的特性の向上
希釈剤を使うことで、エポキシ樹脂は機械的特性の向上がみられることがわかっています。
反応性希釈剤はエポキシ樹脂が硬化する際に、構造内に取り込まれ、均一な架橋構造を助けることから強度や引っ張り特性を増加させます。
一方で、官能基が多いエポキシ反応性希釈剤を使うと、架橋構造の密度が低下するため強度と弾性率は低下しますが、新たに柔軟性が付与されるでしょう。
3. 熱安定性の向上
樹脂はもともと熱や光に対して不安定なため、熱や太陽光などが原因で、酸化や劣化を引き起こします。この劣化反応は、熱や光によって樹脂構造中の水素や塩素が脱離し、塩化水素が発生して連鎖的な分解を引き起こすものです。
エポキシ反応性希釈剤は、発生した塩化水素を捕捉し、分解や劣化を防ぐため熱安定性の向上が期待できます。
4. VOC排出量の低減
VOCとは、揮発性有機化合物（Volatile Organic Compounds）の略称で、揮発する有機溶剤のことです。
一定値以上のVOCを体の中に取り込むと、呼吸器に影響を与え、さまざまな病気の発症を引き起こす可能性があります。そのため、VOC排出量の規定設定が大切なのです。
顔料と樹脂を混合しやすくするために使用する溶剤を反応性希釈剤に置き換えることで、硬化時に溶剤を除去することなく、硬化系内への取り込みが完了するためVOC排出量の低減が可能です。
使用例
エポキシ反応性希釈剤が使用される例をいくつか紹介します。
1. コーティング
建築・建設や文化財の保護・保存を目的としたコーティング剤にもエポキシ反応性希釈剤は添加されています。特に屋外で常に光や熱、雨などにさらされることになりますが、これらの要素に対して耐性を持ちます。
2. 接着剤
金属やガラス、木材、コンクリートなどさまざまな種類の接着にも添加されています。接着剤を使用する際に、密着性を決める重要な要素が樹脂表面の親水性や疎水性の影響です。希釈剤としてだけでなく、樹脂改良剤として働く場合もあります。
3.塗料
前述したように、顔料と樹脂を混ぜやすくするため、エポキシ反応性希釈剤が使用されています。溶剤の場合、VOCの揮発と揮発に伴って膜厚が薄くなるため、2回塗りが必要な場合もあります。一方、エポキシ反応性希釈剤の場合にはVOCの発生がなく、膜厚も変化しないため塗り直しの必要もありません。
エポキシ反応性希釈剤デナコールのご紹介
エポキシ反応性希釈剤として使用されるデナコールを以下に紹介します。各製品のラインアップはHPよりご確認いただけます。以下に、代表的な製品をご紹介いたします。
単官能タイプ
単官能タイプのエポキシ反応性希釈剤の代表的な商品には、「EX-121」「EX-141」「EX-146」があります。
それぞれの特長を紹介します。
EX-121
本製品は、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルという、脂肪族単官能エポキシ化合物です。特長としては、単官能、疎水性、低粘度、低塩素含有であることで、反応性希釈剤としてだけではなく、樹脂安定剤としてもご使用いただけます。
SWIPE
| エポキシ当量（g/eq.） | 粘度 （mPa・s） |
全塩素含量（％） | 色価 (APHA) | 水溶率（％） | 包装 |
|---|---|---|---|---|---|
| 187 | 4 | 0.01 | 10 | 不溶 | 16kg、180kg |
EX-141
本製品は、フェニルグリシジルエーテルという、芳香族単官能エポキシ化合物です。特長としては、単官能、疎水性、低粘度、低塩素含有であることで、反応性希釈剤としてだけではなく、樹脂安定剤としてもご使用いただけます。
SWIPE
| エポキシ当量（g/eq.） | 粘度 （mPa・s） |
全塩素含量（％） | 色価 (APHA) | 水溶率（％） | 包装 |
|---|---|---|---|---|---|
| 151 | 8 | 0.02 | 10 | 不溶 | 18kg、200kg |
EX-146
本製品は、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテルという、芳香族単官能エポキシ化合物です。特長としては、単官能、疎水性、低粘度、低塩素含有であることで、反応性希釈剤としてご使用いただけます。
SWIPE
| エポキシ当量（g/eq.） | 粘度 （mPa・s） |
全塩素含量（％） | 色価 (APHA) | 水溶率（％） | 包装 |
|---|---|---|---|---|---|
| 225 | 20 | 0.3 | <1 | 不溶 | 18kg、200kg |
2官能タイプ
2官能タイプのエポキシ反応性希釈剤の代表的な製品には、「EX-211」「EX-810」があります。それぞれの特徴を紹介します。
EX-211
本製品は、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルという、脂肪族2官能エポキシ化合物です。特長としては、2官能であり、疎水性、低粘度であることで、反応性希釈剤としてご使用いただけます。
SWIPE
| エポキシ当量（g/eq.） | 粘度 （mPa・s） |
全塩素含量（％） | 色価 (APHA) | 水溶率（％） | 包装 |
|---|---|---|---|---|---|
| 138 | 20 | 5.7 | 10 | 不溶 | 18kg、200kg |
EX-810
本製品は、エチレングリコールジグリシジルエーテルという、脂肪族2官能エポキシ化合物です。特長としては、2官能、水溶性、低粘度、低塩素であることで、水系樹脂用架橋剤や親水性付与剤、柔軟性付与剤、反応性希釈剤などとしてもご使用いただけます。
SWIPE
| エポキシ当量（g/eq.） | 粘度 （mPa・s） |
全塩素含量（％） | 色価 (APHA) | 水溶率（％） | 包装 |
|---|---|---|---|---|---|
| 113 | 20 | 0.6 | 20 | 100 | 20kg、220kg |
多官能タイプ
多官能タイプのエポキシ反応性希釈剤の代表的な製品には、「EX-313」「EX-321」「EX-321L」があります。それぞれの特徴を紹介します。
EX-313
本製品は、グリセロールポリグリシジルエーテルという、脂肪族多官能エポキシ化合物です。特長としては、多官能、水溶性、低粘度、高反応性であることで、水系塗料、粘着剤の架橋剤、繊維の表面処理剤、反応性希釈剤などでご使用いただけます。
SWIPE
| エポキシ当量（g/eq.） | 粘度 （mPa・s） |
全塩素含量（％） | 色価 (APHA) | 水溶率（％） | 包装 |
|---|---|---|---|---|---|
| 141 | 150 | 9 | 10 | 99 | 20kg、220kg |
EX-321
本製品は、グリセロールポリグリシジルエーテルという、脂肪族多官能エポキシ化合物です。特長としては、多官能、水溶性、低粘度、高反応性であることで、水系塗料、粘着剤の架橋剤、繊維の表面処理剤、反応性希釈剤などでご使用いただけます。
SWIPE
| エポキシ当量（g/eq.） | 粘度 （mPa・s） |
全塩素含量（％） | 色価 (APHA) | 水溶率（％） | 包装 |
|---|---|---|---|---|---|
| 140 | 130 | 7.5 | 10 | 27 | 20kg、200kg |
EX-321L
本製品は、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルという、脂肪族多官能エポキシ化合物です。特長としては、多官能、疎水性、低粘度、低塩素、高反応性であることで、電子材料向け反応性希釈剤としてご使用いただけます。
SWIPE
| エポキシ当量（g/eq.） | 粘度 （mPa・s） |
全塩素含量（％） | 色価 (APHA) | 水溶率（％） | 包装 |
|---|---|---|---|---|---|
| 130 | 300 | 0.3 | 30 | 不溶 | 18kg |
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