デナコールの実験室

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水溶性エポキシ樹脂とは?

一般的なエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型やクレゾールノボラック型が広く汎用されていますが、近年、地球環境保護や安全性向上のため、水溶性エポキシ樹脂が注目されています。水溶性エポキシ樹脂とは、水に溶けるエポキシ化合物です。主に架橋剤や表面改質剤として用いられ、繊維、紙、塗料、接着剤などに使用されます。水溶性エポキシ樹脂にはさまざまな種類があり、水溶率、エポキシ含有量、粘度等の物性が異なるため、用途や目的に適したものを使用する必要があります。


水溶性エポキシ樹脂が水に溶ける理由

水溶性エポキシ樹脂には、分子内にエーテル基など親水性の極性基があります。一般的に、水溶性高分子とよばれる樹脂は、その分子の主鎖に沿って多くの親水性の極性基を有しているため、巨大分子のままに水に溶けることができます。親水性の極性基として、ヒドロキシル基(‐OH)、カルボキシル基(‐COOH)、アミノ基(‐NH2)、スルホン基(‐SO3H)などがあります。これら極性基の種類や数、分布状態などが水溶性に影響します。水溶性高分子を水中に入れると、親水性基に水分子が水和し、高分子間の引力以上の力で割り込んでいくことで膨潤が起こります。この膨潤が無限大に行われた場合に、水に溶解したことになります。

水溶性エポキシ樹脂を使うメリット

環境にやさしい

水溶性エポキシ樹脂は溶剤を含まない水系塗料に使用できるため、VOC(揮発性有機化合物)を低減することができます。VOCとは、大気中で気体となる有機化合物の総称で、光化学スモッグを引き起す原因物質であるなど、大気環境へ悪影響を及ぼすものとされています。特に塗料由来のVOC排出量は、他の発生源よりも多いのが現状です。また、作業環境においても、VOCは健康被害への影響も懸念されています。したがって、VOCにはさまざまな法的な規制があり、大気汚染防止法や労働安全衛生法などを遵守しなければなりません。有機溶剤は樹脂を溶解しやすい反面、環境に悪影響を及ぼしやすいため、VOCフリーの取り組みが盛んに行われているのです。

多様な反応性

水溶性エポキシ樹脂は、多様な反応性を有することから、さまざまな用途に応用することが可能です。水溶性エポキシは、グルセリンやポリグリセリンのような多価アルコールを原料とした場合、水との親和性が高いだけでなく、多官能エポキシ化合物を形成するため、硬化速度が速くなる特性があります。その特性を利用し、コーティング剤などが開発されています。

性能上の利点

水溶性エポキシ樹脂を使用することで、接着力や耐腐食性、耐薬品性の向上が期待できます。一般的に、接着剤は、被着剤の表面とよくなじんだ(濡れた)状態であるほど、接着力が増します。被着剤が親水性の場合、水溶性エポキシ樹脂と親和性が高く、表面になじむため、強固な接着性が得られます。また金属表面へのコーティング剤として水溶性エポキシ樹脂を応用した場合、固体表面に親水性を付与し、表面に付着した液滴による腐食を防ぐことが可能です。さらに、エポキシ化合物の構造や配合組成を変えることで、耐薬品性の向上も期待できます。


水溶性エポキシ樹脂の用途

フロアコーティング

フロアコーティングに水溶性エポキシ樹脂を使用することができます。フロアコーティングの材料となるコーティング剤は、塗料の一種であり、溶剤系や無溶剤系、水性塗料などがあります。水溶性エポキシ樹脂の場合、耐久性が期待できるうえ、VOCを低減できるため、室内環境にもやさしいフロアコーティング剤の架橋剤として使用可能です。

繊維処理

水溶性エポキシ樹脂は、シャツやハンカチに防シワ性などを付与する繊維処理剤として使用することができます。
繊維(セルロース)のヒドロキシル基を架橋し、構造を固定させるため、シワになりにくくすることができます。

繊維用処理剤

接着剤

エポキシ樹脂の接着剤は、一般的に、電気的特性、機械的特性、基材との密着性、耐薬品性、耐水性、耐熱性、寸法安定性に優れており、電気・電子、土木建築、輸送機、船舶などの接着剤に幅広く使用されています。水溶性エポキシ樹脂の接着剤は、環境規制によって、溶剤系の接着剤が使用できない場合などに有効です。

水溶性エポキシ樹脂、デナコール

デナコールとは

「デナコール」は、ナガセケムテックスが開発した、アルコール性水酸基とカルボン酸などをグリシジルエーテル(エステル)化した特殊エポキシ化合物です。単官能から多官能エポキシまでさまざまな種類の製品を揃え、特に水溶性のエポキシ化合物を多くラインアップしています。エポキシ基の高い反応性を利用し、幅広い用途にご使用いただけます。

特長

水溶性エポキシ樹脂のデナコールは、各種水系処理用途にご使用可能です。また、水だけでなく溶剤にも溶解可能で、複数系統の架橋剤としてご使用いただけます。さらに、VOCフリー化が可能なため、環境負荷が少ない製品です。

種類

水溶性エポキシ樹脂のデナコールについて、代表グレードをご紹介します。いずれも水溶性が90%以上あり、目的や用途によってお選びください。

多官能タイプ

ソルビトールやグリセリンなど多官能のエポキシ化合物で、樹脂の架橋剤、塗料の密着性向上、繊維・紙の改質などに使用可能です。繊維や紙の製造など水周りの作業に適しています。
代表グレード: EX-614B EX-313 EX-512

2官能タイプ

ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを母骨格としたエポキシ化合物で、高水溶性架橋剤、樹脂改質剤などに用いられます。多くは低粘性であり、反応性希釈剤としても幅広くご使用いただけます。
代表グレード: EX-810 EX-861

単官能タイプ

ラウリアルコール(EO) 15グリシジルエーテルなどの単官能エポキシ化合物で、反応性希釈剤、樹脂安定剤などに用いられます。
代表グレード: EX-171

グリーンデナコール

植物由来原料を使用したバイオベースエポキシ化合物です。石油ベースの(枯渇性資源)の従来原料から、バイオベース(植物由来)への切り替えにより、サステナブルなエポキシ架橋剤の製造を実現しました。また、原料植物の光合成によりCO₂排出量の低減にも貢献します。
代表グレード: GEX-313 GEX-512 GEX-521 GEX-614B


FAQs

水溶性エポキシ樹脂に関連する、よくある質問とその答えをご紹介します。

(1)「水系エポキシ樹脂とは何ですか?」

水性エポキシ樹脂は、溶剤として水を使用するエポキシ樹脂で、水溶性エポキシ樹脂とは異なります。英語表記では、水性は「water borne」、水溶性は「water soluble」となります。

(2)「親水性・疎水性エポキシ樹脂とは何ですか?」

親水性エポキシ樹脂とは、分子内に多くの親水基があり、水との親和性が高いエポキシ化合物です。一方、疎水性エポキシ樹脂とは、分子内に多くの疎水基があり、水との親和性が低いエポキシ化合物です。ただし、親水性であっても、必ずしも水溶性であるとは限りません。親水基を多く持つ場合でも、高分子の場合、分子量や分子構造などによっては、水に溶解しない化合物もあります。