デナコールの実験室

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樹脂改質剤とは何か

樹脂改質剤とは、樹脂の機能や性質を改善するために添加されるものです。例えば、樹脂に親水性や疎水性の機能を付与したり、劣化や酸化を防止したり、機械的性質を改善させる物質です。現在、多くの樹脂改質剤が開発されており、樹脂を扱う場合には、樹脂改質剤への理解を深め、適切な樹脂改質剤を選択することが重要になります。

なぜ重要なのか

樹脂は多岐にわたる用途で使用されますが、求められる機能や性質は目的によって異なります。要求される機能を樹脂単体だけで満足させるのが難しい場合、樹脂改質剤の活用が欠かせません。樹脂改質剤を使用することで、少量でより効果的にかつ経済的に、新たな機能を付与し、性質を改善することができます。


樹脂改質剤の種類

樹脂改質剤にはさまざまな種類があります。代表的なものをご紹介します。

衝撃改質剤

衝撃改質剤とは、樹脂の衝撃強度を改善するための添加剤です。衝撃強度とは、衝撃に耐えられる度合いを示す機械的性質のことであり、樹脂によっては簡単に割れてしまうものや傷をつけるのも難しいものがあります。一般的には、ゴム成分を添加し、樹脂中に分散させることで、衝撃強度を改善する方法があります。他にも炭酸カルシウムのような無機系の微粒子を分散させることで、衝撃強度を向上させられることが知られています。なお、樹脂の衝撃強度を測定する方法としては、シャルビーやアイゾットといった振り子式や落球(落錘)式があります。


樹脂安定剤

樹脂安定剤とは、樹脂の安定性を改善するための添加剤です。樹脂は元来、熱や光に対する安定性が十分ではなく、成形加工や使用時による熱や紫外線などによって容易に酸化や劣化が起こります。樹脂安定剤を使用することで、酸化や劣化を抑制して寿命を延ばすことができます。例えば塩ビ樹脂の場合、樹脂中の塩素と水素が離脱して塩化水素が発生すると分解が進みますが、カルシウムー亜鉛系などの安定剤を使用することで、分解を抑制することができます。また、塩化ビニルエマルジョンなど、水系樹脂の場合にはエポキシ系化合物などが使用することができます。
(参考)ハロゲンキャッチャー(樹脂安定剤)


親水性・疎水性付与剤

樹脂表面に、親水性または疎水性の機能を付与する場合に使用するためのものです。水とのなじみやすさを示し、水となじむ性質を親水性、なじまない性質を疎水性といいます。使用する樹脂によって、親水性や疎水性といった性質を考慮しなければなりません。例えば、接着剤や塗料を使用する場合に、樹脂表面の親水性や疎水性が密着性に大きく影響するため、これらの機能は非常に重要な要素になります。
(参考)親水性付与剤・疎水性付与剤(樹脂改質剤)


柔軟性付与剤

柔軟性付与剤とは、樹脂に柔軟性が必要な時に加える添加剤です。代表的なものは、可塑剤とよばれるフタル酸系、エポキシ系などの物質があります。柔軟性付与剤を添加することで、ポリマー間の結合力が弱くなり、樹脂に柔軟性が生まれます。
(参考)柔軟性付与剤


樹脂改質剤の用途

樹脂改質剤はさまざまな用途で使用されています。代表的な事例をご紹介します。

自動車産業

自動車分野では、軽量化の目的をはじめ、さまざまな部材に樹脂が使われています。代表的な樹脂として、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ABS樹脂などがあり、中でもポリプロピレンの使用率が高いのが特徴です。国産車のバンパーには、ポリプロピレンにゴム素材を添加した樹脂が使われています。バンパーには、剛性や耐衝撃性を確保しながら、軽量化を図る性能が要求されるためです。さらに内装材の素材としても、さまざまな機能が求められるため、樹脂改質剤を添加した樹脂が多く使われています。自動車分野における樹脂改質剤の役割は、非常に大きなものとなっています。


建設産業

建築分野では、多くの種類の樹脂が広範囲にわたって使用されていますが、成形性や軽量性、耐汚染、接着性などさまざまな機能が必要となります。例えば塗料として使用される場合、耐薬品性、耐熱性、防水性、防火性能など、要求される性質は多くあります。また接着剤として使用される場合、建築材との密着性や耐水性、作業性などが要求されます。このように建築材料などの樹脂の性質を改善させる場合に、多くの樹脂改質剤が使用されています。


消費者産業

日常生活における消費財でも多くの樹脂が使用されており、さまざまなケースで樹脂改質剤が使用されています。例えばシャツやハンカチなどの衣類に対して使用する繊維用処理剤があります。繊維に、防シワ性や柔軟性、撥水性などの機能を付与することができます。また樹脂製のディスプレイなど、樹脂の透明性が求められる製品があります。透明性は光透過率によって特徴づけられ、樹脂の種類や構造に加え、使用する添加剤の影響を受けます。樹脂の結晶化度が高くなると、密度が高くなり、透明度が下がるため、結晶構造の成長やサイズに作用する樹脂改質剤を選ぶ必要があります。
(参考)繊維用処理剤


樹脂改質剤を選ぶときのポイント

適切な樹脂改質剤を選択しなければ、必要な機能や性質を得ることはできません。樹脂改質剤を選ぶポイントをご紹介しますので、参考にしてください。

樹脂と相溶性

機能や性質を改善させたい樹脂(ベースポリマー)と相溶性が良好な樹脂改質剤を選ぶ必要があります。相溶性とは、樹脂同士の混ざりやすさのことであり、樹脂ごとに異なります。樹脂と樹脂改質剤が十分に混ざり合わないと、期待する機能を得るのが難しくなります。樹脂との相溶性を事前に確認しておくことが重要です。

望まれる特性と性能

樹脂改質剤を使用する目的は、ベースとなる樹脂に新たな機能を付与し、それまでになかった特性や性能を得ることです。どのような性能を得るために樹脂改質剤を使用するのか、またどのような性質は損ないたくないのかなど、望まれる特性や性能を十分に理解する必要があります。
一般的に、樹脂や樹脂改質剤の特性は、化学構造や官能基の種類、炭素鎖の長さ(柔軟性)、立体構造といった要素で決まるので、選択する際の参考にしてください。

処理条件と装置

樹脂改質剤を使用する際の処理条件や装置も重要です。例えば疎水性であるか水溶性であるか、また化学構造として脂肪族系か芳香族系か、官能基に水酸基が含まれているかハロゲンが含まれているかによって処理条件が異なるためです。さらに樹脂と樹脂改質剤を混ぜ合わせる際は、混合機などの装置が必要になります。最適な処理条件において適切な装置を使用することで、期待する機能や性質を得ることができます。


ナガセケムテックスの樹脂改質剤

ナガセケムテックスでは、「デナコール」というエポキシ系化合物の商品を多種多様に取り揃えています。樹脂改質剤としては、親水性付与剤、疎水性付与剤をはじめ、柔軟性付与剤や繊維処理剤、樹脂安定剤などがあります。なお、ナガセケムテックスでは、各種樹脂改質剤の種類を区別しやすくするため、便宜上、親水性付与剤・疎水性付与剤のことを特に樹脂改質剤と呼んでいます。以下に、代表的な樹脂改質剤として、親水性付与剤と疎水性付与剤の商品の特長や物性値をご紹介いたします。用途や目的に応じてご使用ください。
(参考)使用事例


親水性付与剤

DENACOL EX-145

本製品は、フェノール(EO)₅グリシジルエーテルという単官能エポキシ化合物です。特長としては、水溶性、低粘度、低塩素であることで、親水性付与剤や反応性希釈剤としてご使用いただけます。 代表的な物性値としては、エポキシ当量400(g/eq.)、粘度60(mPa・s)、全塩素含量0.3%、色価60(APHA)、水溶率100%となっています。

DENACOL EX-145の構造式

SWIPE

エポキシ当量(g/eq.) 粘度
(mPa・s)
全塩素含量(%) 色価 (APHA) 水溶率(%) 包装
400 60 0.3 60 100 20kg, 200kg

カタログ(デナコール EX-145)

DENACOL EX-171

本製品は、ラウリルアルコール(EO)15 グリシジルエーテルという単官能エポキシ化合物です。特長としては、水溶性であることで、親水性付与剤としてご使用いただけます。代表的な物性値としては、エポキシ当量971(g/eq.)、全塩素含量1.7%、色価10(APHA)、水溶率100%となっています。

DENACOL EX-171の構造式

SWIPE

エポキシ当量(g/eq.) 粘度
(mPa・s)
全塩素含量(%) 色価 (APHA) 水溶率(%) 包装
971 (mp.40°C) 1.7 10 100 18kg

カタログ(デナコール EX-171)

疎水性付与剤

DENACOL EX-141

本製品は、フェニルグリシジルエーテルという単官能エポキシ化合物です。特長としては、疎水性、低粘度、低塩素であることで、疎水性付与剤をはじめ、樹脂安定剤や反応性希釈剤としてご使用いただけます。 代表的な物性値としては、エポキシ当量151(g/eq.)、粘度8(mPa・s)、全塩素含量0.02%、色価10(APHA)、水溶率は不溶となっています。

DENACOL EX-141の構造式

SWIPE

エポキシ当量(g/eq.) 粘度
(mPa・s)
全塩素含量(%) 色価 (APHA) 水溶率(%) 包装
151 8 0.02 10 不溶 18kg、200kg

カタログ(デナコール EX-141)

DENACOL EX-192

本製品は、C12,C13混合アルコールグリシジルエーテルという単官能エポキシ化合物です。特徴としては、疎水性、低粘度であることで、疎水性付与剤をはじめ、樹脂安定剤や反応性希釈剤としてご使用いただけます。代表的な物性値としては、エポキシ当量281(g/eq.)、粘度8(mPa・s)、全塩素含量4%、色価10(APHA)、水溶率は不溶となっています。

DENACOL EX-192の構造式

SWIPE

エポキシ当量(g/eq.) 粘度
(mPa・s)
全塩素含量(%) 色価 (APHA) 水溶率(%) 包装
281 8 4 10 不溶 15kg、170kg

カタログ(デナコール EX-192)