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「正孔輸送層(HTL)」について

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2026/06/01

政府は2050年のカーボンニュートラル達成に必要な2040年度の電源構成を公表しており、再生可能エネルギーの割合を4割〜5割としています(2023年度実績:22.9%)。再生可能エネルギーのなかでも、脱炭素化に向けて注目されているのが太陽光です。既存のシリコン系の太陽光パネルに加え、軽量で壁にも設置できるペロブスカイト太陽電池が注目されています。
本記事ではペロブスカイト太陽電池に欠かせない正孔輸送層(HTL)の機能や材料をご紹介いたします。

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正孔輸送層(HTL)の紹介

正孔輸送層(HTL)とはどのようなもので、どのような機能があるのでしょうか?

正孔輸送層(HTL)の定義と機能

正孔(ホール)とは、ペロブスカイト層で生成された正孔(ホール)をアノード側へ効率的に輸送する層です。電子の逆流を防ぎ、電荷分離と収集を助けることで、光電変換効率(PCE)高めます。
ペロブスカイト太陽電池から発電した電気を取りだすためには、ペロブスカイト層に電極を取り付ける必要があります。しかし、直接取り付けると変換効率が低く、また電極とペロブスカイト層の間で化学反応が起こりペロブスカイト層の劣化にもつながります。

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有機の正孔輸送層(HTL)材料

正孔輸送層は有機と無機に分かれます。まずは有機の正孔輸送層の材料をご紹介いたします。

低分子の正孔輸送層(Small-Molecule HTLs)

低分子の正孔輸送層は、有機エレクトロニクスやペロブスカイト太陽電池などにおいて、正孔(ホール)を効率的に輸送するために設計された低分子材料の層です。代表的な材料はSpiro-OMeTADとTPD(N,N’-Bis(3-methylphenyl)-N,N’-diphenylbenzidine)です。
Spiro-OMeTADはペロブスカイト太陽電池との組合せに適しているエネルギー準位を持っており非晶質性や高い融点とガラス転移温度、良好な上膜性、そして高い溶解性と伝導性などのメリットがあります。
非晶質性とは原子や分子が結晶構造のように規則正しく並ばず、不規則な状態のことをいいます。非晶質性のことを無定形、あるいはアモルファスともいいます。
TPD(N,N’-Bis(3-methylphenyl)-N,N’-diphenylbenzidine)はアミン系の材料で、有機ELデバイスの正孔輸送層によく使われる材料の一つです。優れた正孔輸送材料であるだけでなく、優れた電子輸送系緑色発光材料でもあります。

高分子の正孔輸送層(Polymer HTLs)

高分子の正孔輸送層の代表的な材料はPEDOT:PSSとPoly-TPD、そしてP3HTです。
PEDOT:PSSとは導電性と疎水性を持つPEDOTが、絶縁性と親水性のPSSにイオン結合したものです。組成比や溶媒にもよりますが導電率は100〜1000[S/cm]になり、、他の導電性ポリマーと比べても高い傾向にあります。また、費用対効果に優れたロール・トゥ・ロールでの生産が可能で、フレキシブルな基板上にも塗布できます。
Poly-TPDとは有機ELデバイスに用いる正孔輸送材料であり、有機溶剤のキシレンに不溶で良好なアモルファス膜を作れることが特徴です。
P3HT(ポリ3-ヘキシルチオフェン)もPoly-TPDと同様に有機ELデバイスに用いる正孔輸送材料です。単独での使用も可能ですが、P3HTとPSt(ポリスチレン)からなるブロック共重合体の場合、単独使用の場合に比べて1000倍以上の正孔輸送度をもつことが分かっています。

ドーピングと添加剤

ドーピングとは母材に不純物を拡散させ、p型半導体、あるいはn型半導体を作るものです。添加剤とはドーパントとも呼ばれ、ドーピングにおいて添加する不純物のことをいいます。ペロブスカイト層を含む半導体では負の電荷を持った自由電子と、正の電荷を持った正孔が電気を運びますが、正孔が電気を運ぶようにするp型半導体のドーパントとして利用されるのがホウ素です。
また、伝導性と太陽電池の効率向上のために使用されるのがリチウム塩(Li-TFSI)です。リチウム塩を添加すると電子が一つ取り除かれるため、正孔が残ります。残された正孔により他の正孔がトラップされることを防げるため他の正孔が自由に動いて、電流が生成されます。
他にも安定性を高めるために、リチウム塩を溶解するためのtert-ブチルピリジンを用いることもあります。

無機の正孔輸送層(HTL)材料

正孔輸送層は有機と無機に分かれます。まずは有機の正孔輸送層の材料をご紹介いたします。

金属酸化物

金属酸化物の代表的な材料はニッケル酸化物 (NiO, NiOx)、銅酸化物 (Cu₂O, CuO)、そしてバナジウム酸化物 (V₂O₅)です。

DENATRONの特徴

ニッケル酸化物 (NiO, NiOx)とはニッケルと酸素が結合したもので、酸化ニッケルともいわれており、結合する酸素の数により複数の種類があります。スパッタ法で作製したニッケル酸化物は室温で、かつ高速で成膜可能です。また、ニッケル酸化物で正孔輸送層の表面処理を行うことにより、発電効率や耐久性の向上が期待できるという話もあります。
銅酸化物 (Cu₂O, CuO)とは銅と酸素が結合したもので、酸化銅ともいわれます。酸化銅も酸化ニッケルと同様に、結合する酸素の数により複数の種類があります。Cu₂OはSpiro-OMeTADに代わる材料として安定性、電気特性、コストの面から注目されているのが特徴です。また、銅酸化物は太陽の光を吸収する性質があるため、正孔輸送層以外に光吸収層にも活用されている材料です。
バナジウム酸化物 (V₂O₅)とはバナジウムと酸素が結合したもので、五酸化バナジウムともいわれ、2個のバラジウム原子と5個の酸素原子が結合しています。有機ELデバイスの正孔輸送材料として使用されていますが、ペロブスカイト太陽電池での使用も検討されています。

金属ハロゲン化物

金属ハロゲン化物の代表的な材料はヨウ化銅(CuI)です。ヨウ化銅とはヨウ素と銅の化合物で、ヨウ素原子が1個、そして銅原子が1個結合しています。ヨウ化銅はコストや耐久性の面で、Spiro-OMeTADに代わる材料として注目されています。

炭素系無機材料

炭素系無機材料の代表的なものはグラフェンとカーボンナノチューブです。

DENATRONの特徴

グラフェンとは、6個の炭素原子が正六角形の構造(ベンゼン環)となった芳香族炭化水素が結びついたものを、さらにシート状に重ねた材料です。ダイヤモンド並みの強度を持ちながらも柔軟に折り曲げることが可能で、銀以上の電気導電率を誇ります。正孔輸送層の材料としてSpiro-OMeTADを使用する際にペロブスカイト層との間にグラフェンを使用すると、水や酸素による劣化を防ぎ長寿命化が期待できます。
カーボンナノチューブは炭素原子(C)によって作られたチューブ状のナノ素材で、シリコンの10倍の電気導電率を誇ります。カーボンナノチューブを正孔輸送層材料のように、ペロブスカイト層に塗布することでペロブスカイト結晶の分解が抑制され、耐久性が向上するといわれています。

DENATRONの概要

DENATRONとは

デナトロンはPEDOT:PSSを使用したコーティング材です。センサー電極や帯電防止材料、そして正孔輸送材料などさまざまな用途があります。液体であるためスクリーン印刷やコーティングなどのWet塗工設備によって塗布して成膜させることにより効果を発揮します。

DENATRONの特徴

正孔輸送層(HTL)としてDENATRONを使用する利点

正孔輸送層を作る際はペロブスカイト層の上にスピンコートなどで塗布して成膜します。また、ペロブスカイト太陽電池の効率向上のために、正孔輸送層には高い電気導電度が求められます。これら二つの条件を満たすのがデナトロンです。

正孔輸送層(HTL)用途向けDENATRON Type-P

デナトロン Type-PはPEDOT:PSSをベースに作られた製品です。PEDOT:PSSは正孔輸送層に用いられる材料の一つであるため、それをベースにしたデナトロン Type-Pは正孔輸送層に適した材料といえます。そのなかでも、デナトロンがもつ卓越した透明性と湿度への耐久性は非常にメリットがあります。
逆型構造のペロブスカイト太陽電池では、光が当たる透明電極の下に正孔輸送層があり、さらに下にペロブスカイト層があります。ペロブスカイト太陽電池で発電するにはペロブスカイト層に太陽光を当てる必要があるため、透明電極とともに正孔輸送層にも高い透明性が求められます。また、ペロブスカイト層の劣化要因の一つが湿度(水、湿気)です。湿度をブロックでき、かつ自身も影響を受けないのは正孔輸送層の材料として求められる特性です。デナトロン Type-Pは両方の特徴をもっています。

デナトロンに関するお問合せ

ナガセケムテックス株式会社はお客さまの製品開発や品質向上のパートナーとして、最適な導電ソリューションをご提供いたします。正孔輸送材料の選定にお困りのお客さまはこちらまでお問い合わせください。

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