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帯電防止コーティング材‧デナトロン

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2024/10/15

静電気は製造現場や日常生活で様々な問題を引き起こします。帯電防止コーティングは、この静電気による影響を効果的に抑制する技術です。本記事では、帯電防止コーティングの基礎知識から、先進的な帯電防止コーティング材「デナトロン」の特徴と応用例まで、幅広く解説します。

帯電防止コーティングの基礎

プラスチックやガラスは電気を通さない絶縁体であるため、静電気が発生しやすく帯電もしやすい素材です。
一般的に、金属は導電性があるので静電気が発生しないと思われることが多いですが、金属が電気的に絶縁された状態になると、絶縁体と同じように静電気が発生することがあります。

帯電防止コーティングの基礎

静電気が発生すると、表面にホコリがつきやすくなります。これは、日常生活でもよく観察される現象ですが、製造現場では製品の品質低下や作業効率の悪化に繋がる重大な問題を引き起こします。
他にも、静電気が発生すると機械の誤作動や、場合によっては火災の原因になることもあります。
このように、製造現場において、ほこりの付着防止や帯電防止の対策は必要です。
そこで、静電気を抑制するための技術として注目されているのが、帯電防止コーティングです。
本章では帯電防止コーティングとは何か、その種類や目的、そしてデナトロンがどのような効果があるのかについて解説していきます。

帯電防止コーティングとは?

静電気は、物体が摩擦などで電気を帯びることによって発生し、ホコリの付着が起こり、電子機器の誤動作や火災の原因になることもあります。

帯電防止コーティングとは?

帯電防止コーティングとは、物質を帯電しにくい状態にするための特別な加工です。物質が帯電すると、その電気は触れている他の物体を通じて電荷の偏りがない状態に戻ろうとします。しかし、プラスチックなどの絶縁体は電気を通しにくいため、電荷の偏りが解消されにくく、帯電しやすい状態が続きます。これを防ぐために、導電性物質をコーティングしたり、界面活性剤をコーティングして表面に水分を集めたりする方法が帯電防止コーティングです。この加工により、電気が通りやすくなり、物質が帯電しにくくなるため静電気に起因する様々な問題を防ぐことができます。

帯電防止コーティング材料の種類

帯電防止コーティング材料には様々な種類があり、それぞれに独自の特性と利点があります。これらの材料は、異なる用途や環境に応じて選ばれ、最適な帯電防止効果を発揮します。以下の表は、各材料の特徴をまとめたものです。

横にスクロールしてご覧ください。

  PEDOT:PSS
(ポリチオフェン)
CNT(カーボンナノチューブ) 界面活性剤 ポリピロール
ポリアニリン
導電性 ◎
透明性 ◎ ◎ ◎
耐久性 ◎ ×→
接触面の汚染 非常に少ない 非常に少ない やや多い 少ない
低湿度安定性
◎ 電子伝導
◎ 電子伝導
× イオン伝導
◎ 電子伝導
工程 コーティング コーティング
練り込み
コーティング
練り込み
コーティング
練り込み
必要量 少ない 少ない 多い 多い
部材コスト やや高い やや高い 非常に安い 安い
取り扱い 水系 水系 or 溶剤系 水系 or 溶剤系 溶剤系
基材選択性
◎
◎
◎
◎
  PEDOT:PSS
(ポリチオフェン)
CNT(カーボンナノチューブ) 界面活性剤 ポリピロール
ポリアニリン

◎:特に優れている ○:優れている △:あまり良くない ×:悪い
※(→) がついている項目は配合技術で調整可能

この章では、主要な帯電防止コーティング材料について、その特徴と利点を詳しく解説します。

PEDOT:PSS (polythiophene)

PEDOT:PSSは、ポリチオフェンベースの導電性ポリマーであり、塗膜にすると優れた導電性と高い透明性を発揮します。低湿度環境でも安定して機能するのが特徴です。PEDOT:PSS は優れた導電性を有するため、必要量が少なく、厚さ0.03μmのフィルムでも十分な導電性を保てます。

PEDOT:PSS (polythiophene)

CNT (カーボンナノチューブ)

カーボンナノチューブ(CNT)は炭素原子が六角形に結合したハニカム構造(グラフェン)が筒状になった構造です。粉体の状態では強いπ共役作用とファンデルワールス力により束になって凝集していて、束をほぐすことは困難ですが、上手く CNTを分散させ、塗膜とすると優れた導電性と高い透明性を発揮します。

CNT (カーボンナノチューブ)

CNTの種類や分散設計により導電性を調整することも可能です。PEDOT:PSS と同様に非常に薄い層で優れた性能を発揮します。

界面活性剤

界面活性剤は安価で広く使用されていますが、湿度が低いクリーンルームでは機能しにくい場合があります。これは、帯電防止メカニズムが、材料の表面近くの水分(湿気)の吸収によるイオン伝導に依存しているためです。

ポリピロール、ポリアニリン

導電性ポリマーの一種です。それ自体が導電性を持っているため、低湿度環境下でも安定した機能を発揮します。着色しやすいことや、耐久性が低い特徴があります。

ポリピロール、ポリアニリン

このように、帯電防止コーティング材料にはそれぞれの用途や環境に適した特性があり、適切な材料を選ぶことが重要です。

帯電防止コーティングの目的

帯電防止コーティングは、静電気による様々な問題を防ぐために使用されます。静電気は製品にホコリを付着させ、電子機器の誤動作や火災の原因となる可能性があります。この章では、帯電防止コーティングの具体的な目的について詳しく説明します。

ホコリの付着防止

静電気によって製品にホコリが付着するのを防ぐ役割を果たします。静電気が発生すると、製品の表面にホコリや微粒子が吸着しやすくなり、製品の外観に影響を及ぼしたり、品質を低下させる原因となります。

帯電防止コーティングを施すことで、製品の外観や品質を維持することができます。

製品の保護

フィルムを剥がす際に生じる静電気が原因で製品が故障するリスクを軽減します。静電気は、フィルムやラベルを剥がすときに発生しやすく、電子機器や精密部品の故障や品質を低下させる原因となります。特に繊細な電子部品や高性能デバイスでは、このような静電気による影響は深刻な問題です。

製品の保護

帯電防止コーティングを施すことで、フィルム剥離時の静電気の発生のリスクを大幅に軽減できます。

安全性の確保

静電気は、フィルムやラベルを剥がすときに発生し、スパークを引き起こすことがあります。特に可燃性の素材や環境においては、このスパークが引火の原因となり、大きな危険を伴います。
帯電防止コーティングを施すことで、静電気の発生を効果的に抑制し、安全性の向上、事故や災害の防止に貢献できます。

誤作動の防止

静電気が発生すると、帯電していた電気が放電されるときに電子回路に影響を与え、誤作動を引き起こすことがあります。
帯電防止コーティングは、静電気による誤作動の頻発を防ぎ、製品の信頼性と安定性を向上させます。

誤作動の防止

帯電防止コーティング材 デナトロン

デナトロンは、革新的な帯電防止コーティング材です。
本章では、デナトロンの概要、特徴、用途について詳しく解説します。

デナトロンとは?

デナトロンとは、ポリチオフェン系導電性ポリマー「PEDOT:PSS」をベースに開発したType-Pと、カーボンナノチューブ「CNT」をベースに開発したType-Cからなる導電塗料(インク・コーティング剤)です。
デナトロンは優れた導電性と高い透明性を有する塗膜を形成でき、さらに薄膜であるため、成膜するとほとんど見えなくなります。

デナトロンとは?

幅広い範囲(表面抵抗率102~1010Ω/sq)で導電性を調整可能であり、帯電防止層(静電気防止層)から透明電極まで、幅広い用途にご使用いただけます。
さらに、汎用的なウェットプロセスで塗工でき、比較的低温での熱処理で塗膜を形成できます。
環境負荷の少ない、水または水/アルコール系の導電性コーティング剤です。

製品タイプ

製品タイプ

デナトロンは、その優れた特性と多様な用途に対応するため、2つの製品タイプを提供しています。これらのタイプは、それぞれ異なる材料をベースに開発され、幅広い応用分野に対応できるよう設計されています。以下では、デナトロンの2つの製品タイプについて詳しく説明します。

Type-P

Type-Pは、ポリチオフェン系導電性ポリマー「PEDOT:PSS 」をベースにした導電性コーティング材です。この材料は、優れた導電性と高い透明性を兼ね備えており、電子機器やディスプレイなどの用途に最適です。また、様々な添加剤を組み合わせて機能を付与することができます。多様な用途に対応できる多機能なコーティング材料です。

Type-C

Type-Cは、カーボンナノチューブCNT」をベースにした導電性コーティング材です。特に、耐熱性、耐UV性に優れているので、長期間にわたって安定した導電性能を必要とするアプリケーションに最適です。

特徴

デナトロンは、高機能な帯電防止コーティング材として、多くの優れた特徴を持っています。この章では、デナトロンの特徴について解説します。

  1. 卓越した透明性

    卓越した透明性

    可視光領域で特徴的な吸収が少なく、薄膜で使用可能なため、透明性の高い塗膜が得られます。

  2. 湿度依存なし

    湿度依存なし

    電子伝導型の導電機構により湿度の影響を受けない安定した導電性が得られます。

  3. 優れた加工性

    優れた加工性

    グラビア、スリット、スクリーン印刷など様々なコーティング・印刷方式が適用できます。

  4. 環境に優しい

    環境に優しい

    水系または水 / アルコール系の環境負荷の少ないコーティング材です。

用途

デナトロンの用途は多岐にわたります。この章では、デナトロンが使用されている主要な応用分野について解説します。

帯電防止フィルム

ディスプレイや電子部品へのほこり付着防止や静電気による故障から守ります。
光学フィルム、プロテクトフィルム、キャリアフィルムなどに塗工し、帯電防止効果を付与可能です。
下記のような問題を解決できます。

・静電気で製品にホコリが付着してしまう。
・フィルムを剥がす時に生じる静電気で製品が故障してしまう。
・フィルムを剥がす時にスパーク・引火の危険がある。
・製品使用中に帯電し、誤動作が発生する。

詳しく見る
帯電防止フィルム

帯電防止包装トレイ

ディスプレイや関連部品は、静電気により故障を引き起こす可能性があるため、使用される包装トレイには帯電防止性が必要です。
下記のような問題を解決できます。

・静電気で製品にホコリが付着してしまう。
・フィルムを剥がす時に生じる静電気で製品が故障してしまう。
・フィルムを剥がす時にスパーク・引火の危険がある。
・製品使用中に帯電し、誤動作が発生する。

詳しく見る
帯電防止包装トレイ

EMI/ESDシールド

IPS方式の液晶ディスプレイは静電気の影響を受けやすく、誤作動や故障を防ぐためには帯電防止の機能が必要です。
デナトロンは、有機物質を使用しているため、形成された膜の屈折率が約1.5と低く、金属スパッタ(ITO)膜と比較して光の反射を抑制できます。
光の反射が課題となる自動車のディスプレイの視認性向上に役立ちます。
下記のような問題を解決できます。

・静電気の影響で製品が誤作動してしまう。
・EMI(電磁波干渉)による信号の乱れが発生する。
・静電気放電(ESD)で製品が故障してしまう。
・ディスプレイの光反射が原因で視認性が低下する。

詳しく見る
EMI/ESDシールド

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デナトロンに関する詳細情報や、具体的な用途についてのご相談などお気軽にお問い合わせください。
当社の専門スタッフが、お客様のニーズに合わせた最適なソリューションをご提案いたします。帯電防止コーティング材に関する技術的な質問から、製品の選定、カスタマイズの可能性まで、幅広くサポートいたします。

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ナガセケムテックス株式会社は、お客様の製品開発や品質向上のパートナーとして、最適な帯電防止ソリューションをご提供いたします。お客様のご要望やご質問をお待ちしております。

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