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PEDOT:PSSとは?
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PEDOT:PSSは、導電性ポリマーの一種です。
この材料は、帯電防止の用途としても、透明電極の用途としても使用できます。
PEDOT:PSSが優れる点は以下の通りです。
● 導電性に優れているため、わずか0.03μm程度の薄膜で十分な帯電防止効果を発揮する
● 電子伝導型の導電機構により、湿度の影響を受けることなく安定した導電性を実現する
● 透明性が非常に高く、コーティング後には透明な塗膜になる
● Wetコーティング剤としての使用できるのでグラビア、スリット、スクリーン印刷など多くの印刷方法に対応できる
なお「PEDOT:PSS」とは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)から成る複合物の略称です。
導電機構
PEDOT:PSSは、電子伝導型の導電機構を持つ革新的な材料です。この特性により、湿度に左右されない安定した導電性を実現しています。
従来の界面活性剤を用いた導電コーティングは、電子の移動に水分を必要としていました。これに対し、PEDOT:PSSは「電子伝導型」という名が示す通り、コーティング膜自体が導電性を有しています。
この特性により、環境湿度に関わらず一定の性能を維持できます。
本材料の導電機構は、以下のプロセスで発生します。
1. PSSがPEDOTから電子を引き抜く
2. この過程でジカチオン(バイポーラロン)が生成される
3. ジカチオンが分子内を移動し、さらに分子間をホッピングする
この一連の動きにより、電気が効率的に流れる仕組みが実現しています。
PEDOT:PSSの優れた特性と応用性
前述の通り、PEDOT:PSSは高い導電性、透明性、安定性を兼ね備えた革新的な素材です。これらの基本特性に加え、本材料は以下の3つの重要な特徴を有しています。
● 水系のコーティング材
● 高い透明性
● 導電性の調整
水系のコーティング材
PEDOT:PSSは水分散体であるため、水または水とアルコールの混合物を使用した水系コーティング材を作成できます。これにより、有機溶剤を使用したコーティング材に比べて環境への負荷が少ないというメリットがあります。具体的には、有機溶剤は揮発性が高く、不適切に処理されると大気汚染などの環境問題を引き起こす可能性があります。
一方、水系コーティング材は主成分が水であるため、毒性が低く、環境に優しい素材です。PEDOT:PSSの分散液や塗膜には、生体適合性が高いというメリットもあります。げっ歯類を用いた実験では、PEDOT:PSSに細胞毒性反応が見られないことが確認されています。そのため、PEDOT:PSSは細胞毒性が低く、生体適合性が高い素材であると言えます。
高い透明性
PEDOT:PSSは、可視光領域での吸収が少なく、卓越した透明性を実現できます。
さらに、PEDOT:PSSは有機材料であるため、形成された塗膜の屈折率が低く、無機材料である金属スパッタ(ITO)膜と比較しても、光の反射を抑制できます。
導電性の調整
PEDOT:PSSは、その優れた導電性から、表面抵抗率を102~1010Ω/sqの間で、調整できます。このため、帯電防止層(静電気防止層)から透明電極まで、幅広い製品に使用可能です。
PEDOT:PSSの用途
PEDOT:PSSは、導電性を調整でき、フレキシブルな塗膜が形成可能です。この特性により、タッチディスプレイや帯電防止用途、さらには蓄電池の性能向上に広く利用されています。以下では具体的な用途を解説しています。
電子部品/材料
タッチディスプレイ
PEDOT:PSSは、透明性、加工性、耐久性に優れた素材です。このため、高い透明性や耐久性が求められるスマートフォンのタッチパネルのセンサー電極や、自動車のディスプレイのEMI/ESDシールドとして使用されています。さらに、PEDOT:PSSの塗膜は柔軟性があり、デバイスの形状に合わせた3D形状の加工も可能です。
詳しく見るセンサー電極
PEDOT:PSSは、スマートフォンのタッチパネルや生体機能をモニターするための生体センサーなどに利用されています。PEDOT:PSSを使用するメリットとしては、伸縮性があるため角型や球面形状など、様々な形状のデバイスに対応できることが挙げられます。また、PEDOT:PSSの塗膜は皮膚刺激性が低いため、アレルギー対応や伸縮性が必要な生体センサーにも適しています。
詳しく見るEMI/ESDシールド
PEDOT:PSSを液晶画面に塗布することで、帯電防止機能を発揮し、静電気による誤作動を抑制できます。PEDOT:PSSは形成された塗膜の屈折率が低く、金属スパッタ(ITO)膜と比較して光の反射を抑制し、液晶画面の見やすさを維持します。
詳しく見る帯電防止用途
PEDOT:PSSはわずか0.03μmの厚さで帯電防止機能を発揮し、透明性に優れています。このため、光学フィルムや帯電防止包装トレイに広く使用されています。
帯電防止フィルム
PEDOT:PSSは、光学フィルム、保護フィルム、キャリアテープなどに塗布することで帯電防止機能を付与します。これにより、電子部品にほこりが付着することや、フィルムを剥がす際に生じる静電気による故障を抑制します。PEDOT:PSSはわずか0.03μmの厚さで帯電防止機能を発揮し、高い透明性を実現します。また、用途に応じて導電性能を調整できます。
詳しく見る帯電防止包装トレイ
PEDOT:PSSは、ディスプレイなどを静電気による故障から守る帯電防止包装トレイに使用できます。PEDOT:PSSは透明性が高いため、トレイ内の内容物が見やすく、電子伝導型の導電機構により湿度に依存せず使用できます。
詳しく見る蓄電池
PEDOT:PSSは少量で高い導電性を発揮し、優れた温度安定性を持つため、リチウムイオンバッテリーやコンデンサーなどの二次電池に使用できます。
電池 (リチウムイオンバッテリー、全固体電池)
PEDOT:PSSは、リチウムイオンバッテリーや全固体電池の導電助剤として使用できます。少量でも高い導電性を持つため、活物質量を増加させることが可能です。
詳しく見るコンデンサー
PEDOT:PSSは耐電圧性の向上が必要なコンデンサーに使用されます。高い導電性と温度安定性を兼ね備えており、コンデンサーの電解質として理想的です。
詳しく見る有機系の太陽電池
PEDOT:PSSは、太陽電池の正孔注入層として機能します。PEDOT:PSSを使用した有機系太陽電池は、従来の無機系太陽電池に比べて安価で軽量というメリットがあります。
電子ペーパー
PEDOT:PSSは柔軟性と透明性に優れ、電子ペーパー(フレキシブルペーパー)の材料として最適です。これにより、軽量で曲げられる電子ディスプレイの製造が可能になります。
導電性コーティング材 デナトロンの紹介
デナトロンは、ナガセケムテックスが提供する高性能な導電性コーティング材です。帯電防止用途や透明電極用途をはじめ、多岐にわたる応用分野で利用されております。詳細についてはこちらをご覧ください。
デナトロンには、以下の2つのタイプがあります。
● 「PEDOT:PSS」をベースにしたType-P
● 「ナノカーボン」をベースにしたType-C
Type-P
Type-Pは、PEDOT:PSSを原料にした導電材料です。帯電防止および透明電極用途のいずれにも適しています。高い導電性と低抵抗の塗膜を作成でき、液の安定性にも優れているため、濡れ性やpHの調整、防水性、耐熱性の付与など、さまざまな添加剤を加えることが可能です。
Type-C
Type-Cは、カーボンナノチューブ(CNT)を原料にした導電材料で、主に帯電防止用途に適しています。耐熱性や耐UV性に優れており、高い耐久性が求められる場面での使用に最適です。
PEDOT:PSSに関するよくある質問
PEDOT:PSSは酸性ですか?
はい、酸性のグレードと中性のグレードがございます。用途に応じてお選びいただけます。
PEDOT:PSSは高価ですか?
PEDOT:PSSは高価ですが、ごく少量の塗布で所望する効果を発揮できます。このため、従来の素材よりも使用量を削減でき、コストを抑えられる可能性があります。また、原料メーカーと協力して製造方法の見直しも行っており、低コストのグレードもご案内できますので、まずはご相談ください。
PEDOT:PSSの透明性は?
PEDOT:PSSは透明性に優れています。具体的には、塗膜の全光線透過率は95%以上を実現しています。
PEDOT:PSSの推奨される塗布方法は何ですか?
グラビア、スリット、スクリーン印刷など、様々なコーティングおよび印刷方式に対応できます。乾燥も容易であり、130℃で1分程度で完了します。
PEDOT:PSSコーティングの長期耐久性は?
PEDOT:PSSは、導電性高分子の中で最も安定な材料として知られています。さらに、お客様のニーズに合わせて、耐熱性、耐湿性、耐UV性などの機能を付与することも可能です。ただし、PEDOT:PSSは無機材料と比べると紫外線に弱いため、直射日光に晒される場合などは、耐UV性を付与してご使用いただくことをおすすめします。
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デナトロンに関する詳しい情報や特定の用途についてお気軽にお問い合わせください。当社の専門家がお客様のニーズに適した、帯電防止コーティング材料、製品の選択、カスタマイズに関する技術的な質問にお答えします。
当社ではお客様のニーズに合わせた商品を提案させていただきますので、使用用途などをお気軽にご相談ください。