Story 04

掛け算がもたらしたもの

モビリティソリューションズ事業

モビリティソリューションズ事業

加工力×検品力×対応力
3社が手を組み実現した、
自動車部品の製造輸入
スキーム

モビリティソリューションズ事業×塚田理研工業株式会社×防府通運株式会社

品質要求が特に厳しいと言われる、自動車部品。コスト削減のため海外で製造を行っても、自動車メーカーの品質基準を満たすものがなかなか作れない。そんなジレンマを解決すべく立ち上がったのが、今回の3社。メーカーで海外製造したものを物流倉庫で検品し、スムーズな納品までを手配する試みは、社内外ともに高い評価を受け、同様のモデルも続々と立ち上がっています。苦難の先に形を成した、独自のスキームについて取材しました。

Partnerパートナー

塚田理研工業株式会社
1963年創業の塚田理研は、表面処理加工を得意とするメーカー。世界に先駆けてプラスチックめっきの量産加工に成功し、現在ではプラスチックめっき加工と、プリント配線版へのめっき加工を2本柱としている。また近年は、めっき製品のリサイクル化にも積極的に取り組む。本社は、水がきれいな長野県駒ヶ根市にある。
Partnerパートナー

防府通運株式会社
山口県防府市を拠点に、運送事業を営む防府通運。創業は1937年と古く、輸送・保管業務だけでなく、国際物流分野における通関・輸出入業務も行っている。また、物流の付帯業務として検査機能を拡充し、現在は検査・検品・加工・手直し・梱包などを含めた物流ソリューション企業として、その存在感を増している。

Project Member

  • 田丸 尚樹

    西日本長瀬
    モビリティソリューションズ事業
    課統括

  • 武田 圭介

    西日本長瀬
    モビリティソリューションズ事業

  • 島 良市 様

    塚田理研工業
    国際営業部部長

  • 岩瀬 晋一郎 様

    防府通運
    ソリューション営業部部長

市場環境と3社の思惑が、ピタリと一致した

3社の関係は、どのように始まったのですか?

田丸

防府エリアでは、30年ほど前から自動車メーカーやタイヤメーカーが拠点を持ちはじめ、多くのサプライヤーも集うようになって、自動車産業が勃興しました。私たちも、樹脂の原材料を卸す仕事が多くなり、海外メーカーから材料を購入して、防府エリアに在庫して提供するケースが増えていきました。その中で、充実した物流機能と倉庫をお持ちの防府通運さんと出会ったのが、最初のきっかけです。

岩瀬

そうですね。私たちは主に運送業を主軸としてきましたが、20年ほど前から自社倉庫を持つようになりました。現在は、倉庫での保管や検品業務も、多く行っています。

私と西日本長瀬さんとの出会いは、中国の広州にあるNAGASEグループの広州長瀬貿易有限公司とのつながりからでした。ある企業とジョイントベンチャーを組んで、日本の自動車メーカーの部品製造を中国で進めていくにあたり、樹脂の成形材の購入先として広州長瀬と出会いました。彼らと一緒に市場調査などをしていく中で、目処がつき、中国で本格的にめっき製造を進めていく運びとなったんです。

武田

中国進出も、最初はご苦労があったようですね。

めっきは、洗浄に始まり洗浄に終わると言われるほど、水が大事なんです。長野のきれいな水を活用して、時計やカメラといった精密機器のめっきを作って来た我々としては、中国でも良い水を確保できるかが大きな問題でした。最近では、ようやく品質も安定させられるようになってきましたね。

今回の事業スキームについて、教えてください。

ある自動車メーカーから、めっき部品をコスト削減のために国内から中国製造品に移したいという意向があり、我々塚田理研工業がその候補に上がったんです。意匠性の高い特殊なめっきが必要で、それを作れるのは数社しかなかったので。

岩瀬

リーマンショック以降、円高も相まって輸入部品が急増しましたね。私たちもその頃、輸入手続きなどを請け負えるように体制を整えていきました。

田丸

弊社もコスト削減の波の中で、自動車メーカーとの取引のメインであった樹脂原料の販売が下がり、次の一手を打つ必要がありました。その中で各社に働きかけ、塚田理研さんの中国側で作っためっき製品を、防府通運さんで在庫・検品し、西日本長瀬が自動車メーカーに納品する、というスキームを構築していきました。

岩瀬

当初はこのスキーム自体が手探りの中、弊社が検品作業を担うことになりました。これが、うちとして初めての検品業務です。検査員はまだ1人。今や、自動車部品物流部という部門ができ、検査員は30人体制です。2社の協力がなければ、ここまで大きくできなかったと思いますね。

1人体制から、100人にまで成長

やはり、中国製造における品質の安定化が難しかったですね。日本製の樹脂やめっき液を使って、なるべく日本での製造に近づけた環境を作ったんですが、それでも設備の大きさは違いますし、温度などの条件も違う。2週間ぐらいで帰れると思っていた中国での技術指導に結局10ヶ月かかった、なんてこともありました。

武田

中国側と日本側で、良品と不良品の判断がそもそも違う、ということもありましたよね。

田丸

日本人は見た目を重視しますし、少しのムラや気泡などがあれば、自動車メーカー側が受け取ってくれません。もしそれが最終品に使われてしまったらクレームの原因やブランドイメージにまで影響するわけですから、みんな神経を尖らせて対応していました。

岩瀬

めっき製品を見る目が、ずいぶんと養われましたね(笑) 当時は不良率が何十%とあり、作ったそばから不良で捨てられていくので、とてもビジネスとして成り立たない状況でした。

田丸

不良率が高いと予定の納品数が足りなくなり、納品に穴を開けてしまうことにもなります。これは、商社としては何としてでも避けないといけません。

岩瀬

ですので、毎日、不良が出た個数や箇所、その現象を報告して、中国側にフィードバックし、一歩ずつ改善を続けていきました。最初の5年ぐらいは、本当にきつかったですね。

今はもう、中国のレベルはかなり高いところまでいっています。空気がガラッと変わりました。

岩瀬

私たちとしても、きちっと検品の役割をこなせるようになり、他社から同じビジネスモデルでの依頼も増えていきました。苦労した分の成果が、次につながるのは嬉しいことです。

田丸

安価で品質の高い部品を安定供給できる。自動車メーカー側からも高い評価をいただいて、最初の車種以降も次から次へと採用が決まりました。ある車種は、外から見える光りモノは全部塚田理研さんだったりします。

武田

不良が出てしまった時の対応も大事で、正しく原因が究明され、対策が取られて、同じミスを起こさなければ、メーカー側からも評価されます。「長瀬に任せておけば安心」となることで、違った商材の受注にもつながっています。

西日本長瀬という会社の印象や、今後の期待について、聞かせてください。

岩瀬

いろんな商社とお付き合いがある中で思うのは、柔軟さですね。「言われたことだけやっていれば良い」と言われてしまうのが物流倉庫業ですが、西日本長瀬さんは、協業パートナーとして私たちと向き合ってくれ、こちらの要望にも対応してくれます。こういう姿勢は、我々としても、このビジネスにより真剣に取り組もうという原動力になりますね。

田丸

ありがとうございます。業務フローの改善など、良いと思えるものは積極的に変えていきたいと常に思っています。

岩瀬

事実として、小さな机1台で始めたビジネスが、今や自動車部品物流部として100人を超える規模になり、新しい拠点もできます。このような形で、これからもともに成長できると良いですね。

私たち塚田理研のビジネスは、商社を介さないものの方が多いんです。だから、商社が間に入るというと、警戒する人が多い。でも、このプロジェクトによって社内でその認識が変わりました。ものづくりに向き合い、学び、私たちと同じスタンスで取り組んでくれるのは、なかなか普通の商社にはできないことだと思いますよ。

武田

とても嬉しいお言葉です。

私の夢は、うちのめっきを世界に供給することなんです。その時に、ものづくりをわかってくれているNAGASEグループが世界中にネットワークを持っていることは、大変心強いです。既存の取引を継続させるだけでなく、新しいチャレンジも、ぜひ一緒に進めていければと思います。

※掲載されている情報や部署名は取材当時のものです。