プラスチック情報館
プラスチックが食品をおいしくする!?
冷凍食品のおいしさの秘密
国内で冷凍食品が注目されるようになったのは、1964年に開催された東京オリンピックの頃。世界各国から集まるアスリートや関係者たちに、それぞれの国・地域の食習慣や宗教などを背景とした食文化に対応した多彩なメニューを効率的かつ大量に提供するために、多くの冷凍食品が開発されました。この頃は、食材を中心とした業務用冷凍食品が主流でした。
1980年代になってから、調理済みの冷凍食品が数多く流通しはじめました。その背景には電子レンジの一般家庭への普及があります。しかし、この頃の冷凍食品はメニューも限られ、食感や味もそれなりで、レンジインする際も皿に移し、ラップをかけたり、揚げ物は油で揚げる必要があったりするなど、手間も時間もかかっていました。
その後、冷凍食品は徐々に多様化し、特に1990年代の後半あたりからメニューのバリエーションが増えると同時に
レンジ調理も簡素化されるなど、急激な進化を遂げました。そして、現在では、パラパラ食感のチャーハン、シコシコ食感の麺・パスタ、グリルで焼いたような焼き魚やグラタンなど、味も食感もプロの料理と遜色ない本格的な冷凍食品が数多く登場しています。進化したのはこれだけではありません。開封後はトレイのままレンジインして、そのまま食べられるなど利便性も向上しました。
このような冷凍食品の進化を加速した背景には、調理技術や冷凍技術の進化、運搬・保管などのデリバリー改革があり、それに加えて、トレイや蓋材などの包装材料の原料となるプラスチック技術の進化も一役買っています。
食品のおいしさを支える包材(プラスチック)技術
プラスチック技術は、冷凍食品やチルド食品、レトルト食品などの加工食品を中心に、野菜などの生鮮食品まで
さまざまな食品のおいしさを支えています。その具体的な技術について解説します。
耐寒・耐熱性
冷凍食品をおいしくした要因のひとつに、食品素材の細胞膜を破壊することなく冷凍する急速冷凍技術があります。その技術を存分に発揮するためには、-30℃~100℃を超える範囲まで、急激な温度変化に耐えるトレイなどの包装材料が要求されます。
また、一部の調味料には沸点の高い成分も含まれ、レンジ加熱によりトレイの耐熱性能を超えた温度まで上昇することでトレイに穴を開けるリスクもあるため、使用する調味料の種類や量に制限がありました。このような問題を解決するためにも包装材料の耐熱性の向上は重要視されています。
密封性(ガスバリア)
食品の腐敗や品質劣化の一番の要因は酸化です。食品を密封することで酸素を遮断する包装技術と材料技術の確立は、冷凍食品に限らず、チルド食品、フリーズドライ食品、レトルト食品、菓子などの品質維持や賞味期限の延長 さらにはフードロスの削減にも大きく貢献します。
酸素吸収材を併用したり、不活性ガスを密封することもあります。さらにバリアにとどまらず包材内の酸素を吸着する薬材をフイルムに練りこんだ「アクティブバリア包材」も開発されています。
難溶出性
冷凍食品などをレンジで加熱した際、トレイの樹脂成分の一部が食品へと染み出したり、食品成分がトレイに染み込んだりすると、食品の味や色を変化させるだけではなく、食の安全にも問題が生じます。これらの問題を解決するためには、どのような状況下でも成分の染み出し、染み込みを抑制する包装材料の技術が必須です。
鮮度保持性
青果物の収穫時のおいしさや栄養をそのまま家庭に届けるため
ガス・水蒸気の透過度をコントロールする機能です。
易開封性
シール蓋が簡単に剥がせる(イージーピール)機能や開封部の直進カット性に優れた包材です。包材、容器の利便性に寄与します。
保香性
食品の風味や香りを長期間維持する包装材料技術です。
防曇性
透明なパッケージや蓋材の曇りを防止し、食品の見栄えを良くする技術です。
易廃棄性
トレイやパッケージを廃棄する際、トレイに残った中身を簡単に洗い流せるようにする技術で、難溶出性の技術とも関連します。
また、手で簡単に潰してゴミを減容量化する技術、ゴミ焼却時の発熱熱量を抑える技術なども含まれます。
離型性
流動性のあるレトルト食品やチルド食品、冷凍食品をパッケージから中身を無駄なくきれいに取り出す包装材料技術です。
NPCが提唱する「おいしい包材」
NAGASEグループおよびパートナー企業で提案・評価・製造まで
NAGASEグループ内に設置されたフィルム・シートの研究開発拠点FSB(Film Sheet Base)では、食品包装材料の原料となるプラスチックの物性評価・分析を進めると同時にトレイ素材のフィルム・シートの押出成形やラミネート加工などの独自技術の開発により、トレイをはじめとする包装材料の多機能化を実現。
また、これら一連の技術を「おいしい包材」と総称し、食品メーカーやパッケージメーカーなどへの提案活動を通じて、食品の味覚品質の維持向上や賞味期限延長によるフードロスの削減などにも貢献しています。